福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2016年3月号掲載分

 
 『ニチモ  1/200 旧日本海軍 戦艦大和 捷1号作戦時

『春秋左氏伝 全釈漢文大系』ほか  集英社

 南九州からの電話で、漢文の先生をしていたご主人の本を処分したいという。本の内容を詳しく知りたいというと、本棚に入った本の背を撮影して送ってくださった。古本屋ならこれで大方の見当はつく。傷みの程度は手に取らないとわからないが、出張するに十分の価値がありそうだ。
ただ南九州まで行くからには、出張経費を分担させるためにもできれば同時にまとめて数件の買い取りをしたい。新聞広告を見て近くの人から買い取り希望の電話が入らないものか。そうこうするうち、同じ方から今度は、手つかずのプラモデルもたくさんあると詳細な内容を知らせる封書が来た。これもまた魅力的な仕入れになりそうだった。こうなると俄然行く気が出てくる。幸い同じ県内でもう一件の買い取り希望があったので併せて出向くことにした。
 さて、写真のこのプラモデルはその時仕入れたもののひとつ。このほかにも大小あわせて多数仕入れたのだが、これが最大のものだ。全長263メートルの戦艦大和の200分の一だから1.3メートル程の長さがある。プラモデルとしてはバカでかいと言っていいだろう。売れたあと送るのに難儀した。まず入れる箱が無い。やむをえず短い箱を継ぎ足した。こわれもので心配だったが無事到着したようだ。
 さて、もうひとつの漢文の本だが、これはオークションでまとめ買いされた。落札者は外国人研究者らしく、今すぐは荷物を受け取れないので、発送を少し遅らせてほしいとの要望を受けたのだが、そのメールの日本語がみごとなので一部を紹介したい。
 「当方は現在日本から離れて本国に一時帰国中ですが、ご出品された本は学習上にどうしても不可欠なものであるので、敢えて本国から入札いたしました。」「もし発送を遅らせることによって保管料金などが生じる場合、もちろん当方は全額負担させていただきます。」「度重ねて懇願をご了承いただけるよう宜しくお願いいたします。ご返事の連絡を謹んで待ちしております」
 微細な難はあるかもしれないが、簡潔にして十分な達意の文章。見事なものだ。このコラムを四苦八苦して書き、添削を繰り返しても不満が残る文を書いている自分からみると、きっと数分で書いたに違いない事務連絡の文章(しかも母国語じゃない!)でこれほどの文が書けるとは羨ましい限りだ。