福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、獄中からの手紙を受けるの巻

  

ある日九州の某地方都市から封書が届いた。手紙類はときおり受け取ることがあるが、こんな本を探しているが貴店に在庫があれば金額をお知らせいただきたい、というものか、本のリストが添付されていていくらで買ってくれるか知らせよというものがほとんどだ。

 先日など一方的に自分が処分したい本のリストを送り付けておいて、返事が遅いと電話でクレームをつけてくる輩までもが出現した。リストをざっと見たところ値の付かない本がほとんどで、買えそうなものは僅かに混じっている程度。便箋数枚にわたるリストを全部チェックするとなると結構な時間がかかるので後回しにしていたのだが、いきなりクレーム電話を受けたので丁重にお断りした。

 今回の封書は拘置所からのもので、ちょと変わった依頼内容だった。

「冠省 私は現在熊本の刑事施設で暮らす者ですが、支援者からの差入本や自費購入本等読後の書籍を御店の方で再利用して頂けないかと思います…。本の査定や代金、それに郵送費も要りません。

 私の方で読後の本が10冊以上溜まり次第その都度御店へ郵送しますので替りに時々本に関する情報、例えば最近発売された梅田彩佳の写真集、現在発売されてるアイドルのお宝写真誌等の書籍名・出版社名・金額、例えばこの様な出版情報をいただけないかと思います…。

 刑事施設での収容生活の為市井の書店には赴けず自費購入や支援者への差入依頼にも世に存在している本を認識したいと思いますのでこの様な形と相成りますが、送った本に対し数カ月に一度程度お手隙の際にでも私の希望する出版情報を教示して頂けませんか…。宜敷くお願いいたします。敬具」

 おそらくはよかばい堂の住所を新聞広告で見たのだろう。監獄内のことは想像するしかないが、所内でネットを自由に使うのは難しいだろうが新聞はおそらく読めるに違いない。

 筆遣いも文章もしっかりしている。便箋には青いインクで一行おきにしたためられており、手紙を書きなれた印象すら受ける。

 少し考えて、相手の希望通りに対応してみることにした。こちらにとっては特段にリスクを負う話ではないし、その収容者との間に特別な関係ができるわけでもないから、出所後に面倒に巻き込まれることも考えにくい。

 切手が同封されていたのでまずは実例としてアマゾンのタレント写真集のベストセラー上位25点のリストをプリントアウトし、この程度の情報であればいつでも送ることができると書いたメモを添付して送ってみた。

 数日後さっそく小さめの宅配便が届いた。中に入っていた本はいずれもビジュアルの強いもので旅行雑誌やリゾートホテルのガイドブック、それにタレントの写真集とエロ本数冊だった。しかもどの本もきわめて状態が良く、アマゾンで「非常に良い」で出品できそうなものばかりだ。

 今度は少し趣向を変えて(?)アダルト写真集のリストを送ってみた。向こうからエロ本が送られてくるのだから、こっちからその程度の情報を提供したとて検閲にかかることはないだろうと考えてのことである。手紙は無事彼の手元に届いたのだろうか。彼はこのリストに満足しているだろうか。さてその後次の便はまだ届いていない。