福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、離島に出張するの巻

壱岐で本の買取をしてきた。と言うと同業者から驚かれた。経費がかかるでしょう、と言うのだが実はそうでもない。高速艇で往復8000円。近県に車で往復してもガス代高速代で同じくらいかかる。本の配送も海運会社の「港止め」という「裏ワザ」を使えば驚くほど安い。荷物の受け取り場所だって天神にほど近い那の津だ。

 というわけで、経験値を増やすためにも一度チャレンジしたかった離島での古本買い取りに行ってみたのだった。 

 そうはいっても事前にかなり細かく本の内容を把握していた。スマホで撮影した写真を送ってもらい、内容を精査したうえで渡航を決断したのだ。

 特段の準備と言えば段ボール箱を持って行ったことだろうか。事前の情報で島内での入手は難しいと判断したのだがこれは正解だった。住んでいる町ならともかく、初めて行く地で段ボールを入手するのはハードルが高い。もちろん運送会社や郵便局で買うこともできるが、必要な数が揃わないことも懸念されるので持参するのが賢明だ。

 電話をくれたのは本の所有者から建物の解体を頼まれた建設会社の社長(仮にP社長としよう)だった。他界した叔父から本を相続した人がいるのだが廃棄するには忍びないのでどうにかならないかと、そのP社長に相談したのだそうだ。でネットで弊店を見つけて電話をくれたというわけだ。

 壱岐に行くのは初めてだったので、せっかくなら仕事だけで日帰りするのはもったいないと一泊することにした。仕事を終えたら夜は海の幸を肴に名産の麦焼酎でも飲もうという魂胆だ。

 さて実際に船に乗ってみると離島とは思えないほど近く感じる。70分の航海時間のうち半分ほどは志賀島糸島半島が見えている。糸島が見えなくなってきたらもう壱岐が見える、という感じだ。

 港に着くと電話をくれたP社長が声をかけてくれた。段ボールの束を抱えていたのでわかったらしい。 

 彼の車で現地まで案内される。港に近いその家には書庫があり、昔のインテリが好んだ教養書や全集が大量にならんている。これだけの本を集めるのは福岡の書店まできっと何度も足を延ばしたに違いないと考えながら見る。最終的に厳選した本を10箱ほどに詰め込んで、海運会社に持ち込んで仕事を終える。

 P社長のおかげで仕事は午前中で終わった。そこで別れてもいいはずなのに、心優しい彼は右も左もわからない私を放り出さず、昼食に付き合ってくれるという。おかげて観光地巡りのレクチャーを受けながら昼食をとる。

 彼は地域振興のさまざまな団体に名を連ねており、紹介してくれた場所はどこもハズレがなかった。その後レンタカーを借りて一人で午後の観光を楽しんだ。

 個人的には内海湾の小島神社が気に入った。写真でご紹介しよう。海はもちろんきれいだが、その近くを走る道の風景がまた素敵だ。よくみると道路標識が少ない、というか全くない場所がある。標識のない道が海岸沿いに続く風景は新鮮だ。

 私が一人で泊まると知ってP社長は不憫に思ったのだろう、晩飯を付き合ってくれるという。彼の案内で福岡市内で修業した大将の居酒屋に行き壱岐麦焼酎「海鴉」を飲みつつ念願の海の幸を堪能した。

 

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内海湾の小島神社。若い観光客も多いパワースポット。





 









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道路標識のない海沿いの道

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壱岐で買った「人類の知的遺産」