レコードの話
最近レコードが良く売れる。弊店の在庫は歌謡曲やフォーク・ロックを中心に約八千枚。ほぼ毎日ネットで数枚売れている。たったの数枚ではあるが、年間にすれば千枚ほどになるのだから、古本屋としては立派な商品だ。
新聞雑誌やネットでレコードに関する記事を目にすることも増えた。人気の理由がいろいろ取り沙汰されている。若いミュージシャンがレコードの音が好きだと言っているとか、あまりにも簡単に音楽が聴けることへの反動だとか、ジャケットの魅力だとか。それぞれ当たっているのだろう。
二十代のわが家の娘はレコードを知らない世代だが、なぜだか好きなミュージシャンのレコードをネットで注文し、後日レコードの掛け方を私に尋ねにきた。アナログレコード(わざわざアナログというところが、現代風だ)が目新しくて興味を持ったのかもしれない。
よかばい堂で売っているのは主にEPとLPだ。SPは数枚を除き今のところほとんど扱っていない。街にあるレコードショップもおそらくそうだろう。SPは重く割れやすいので扱いが難しい上、なによりもコレクターが少ないので商品の回転が悪い。売ってくれた人から聞いたのだが、どこのレコード屋からもSPは買い取らないと言われたそうだ。商売として成立させることが難しい商材なのだ。
弊店でもSPは今のところほとんど売ってないし、仕入れも本のついでに買うだけだから商売といえるほどのものではない。それでもこの数年で数百枚のSP盤がたまってしまいはスペースを占拠し出したので、自分の興味と価格相場を頼りに取捨選択することにした。
まず、自分の興味で言えばJ-POPの源流を遡る選び方になる。ロカビリーの平尾昌晃や洋楽カバーの雪村いづみ・江利チエミなど戦後の歌手が多い。わが敬愛するミュージシャン大瀧詠一が好んだ春日八郎・平野愛子・三橋美智也なども手元に残したい。前回書いた美空ひばりももちろん、笠置シヅ子も当然残す。
戦前だと「ダイナ」のデイック・ミネや「胸の振り子」(井上陽水がカバーした)の霧島昇、ハワイ帰りで明るい声の灰田勝彦なども対象にしたい。残念ながら先日亡くなった弘田三枝子のSPは見たことも聞いたこともない。はたして存在するのか。彼女のデビューは61年だから当初からEP盤のみしかリリースしなかった可能性が高い。
価格については、千差万別で戦前・戦後の区分はあまり意味がない。戦前の盤が古くて高いとは限らず、むしろ軍歌・長唄・民謡などは意外と安い。むしろ戦後の歌謡曲の方が人気があって高値になることはザラだ。
人気があれば値が上がり、希少性が加わればさらに高騰するという、当たり前の結論になる。熱心なコレクターのいる歌手のものはどうしても値が張る。美空ひばり、エルビス・プレスリー、などがその典型だ。