古本屋と建具
「昭和レト ロ」が人気なのは雑誌やレコードばかりではない。デザインの世界でも1960年代や70年代のものがに妙に人気があったりする。時計やラジカセなどから家具にいたるまで、ちょっと前まで時代遅れでダサいと思われていたものが、いまや回周遅れのトップランナーのような趣きだ。いやトップとは言いすぎか。だが人気が出ているのは間違いない。
今回はちょっと珍しいものの話をしよう。それは建築建具である。建具とは、言ってしまえばドアや扉・窓・襖や障子の総称だ。そんなもの、古本屋といったい何の関係があるというのか?
古本を買いに行ったつもりが、それ以外のものを仕入れて帰ってきた、ということは少なからずある。絵画・掛軸・茶道具などの骨董品は言うに及ばず、レトロががった家具などもずいぶん譲ってもらった。
先日は門司の旧宅に行って、本はさほど買えなかったが先方さんと話をしていると、本を処分したあとは築九十年のその家を解体するというではないか。そう言われてよく見ると、障子や引き戸に使われている古いすりガラスは中古市場でそこそこ値がつきそうな代物だ。聞くとどうせ解体するのだから、興味がある人に持って行ってもらいたい、お金はいらない、ゴミにするよりも誰かに使ってもらえたら嬉しいという。それじゃあ、ということで知り合いの古道具を扱う知人や古民家再生を手がける工務店などに当たってみたところ、無料なら引き取りたいという大工さんが見つかり、先日門司まで同行願い貴重な建具類を割愛いただいた。
建具類にはまったく疎い小生、貴重なのはガラス戸、もっと言えばガラスだけだと思っていたのだが、現場に入った大工さんは「昔の職人はいい仕事をしてますねえ」と感心する事しきりで、ガラス戸以外にも手の込んだ細工を施した障子なども譲り受けてきた。
私としてはガラスだけでも救出できれば商売になるのでは、と考えていたのだが、大工さんからの提案を受けてわが家で使うことにした。
というのもその大工さん、わが自宅兼事務所のリフォームを担当してくれているのだ。で、プロの目からみるとどうやらいくつかはリフォームで使えるという。
リフォームと言えば「新築そっくりさん」という商品があるように、新しくするのが人気なのだろうが、予算の限度がある古本屋としては昭和レトロな趣を残したリフォームにしてほしいと工務店にはお願いしていたのだが、今回譲り受けた建具類のいくつかはどうやらそれにぴったりと来るらしい。
さて出来上がりがどうなるかは楽しみにしているのだが、完成した暁には元の持ち主も呼んで再生した建具を見てもらいたいと思っている。