福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2009年3月号掲載分

植木等的音楽
CD (1995/7/15)
レーベル: ファンハウス
このコラムでは主にプレミア付きで売れた商品を紹介しており、売れた本やCDの内容については基本的には触れないできた。古本屋が売る本を全部読んでるなんてことは金輪際ありえないわけだし、CDにしたって全部聞いていたらとても時間が足りない。
 ところがこのCDについては内容も紹介したい。何のことはない、筆者の愛聴盤だからだ。もちろん、定価の倍以上で売れるプレミア商品であるから、コラムで取り上げる条件も備えている。
 タイトルからしてわかるとおり植木等のアルバムだ。プロデュースは大瀧詠一。無責任男として人気を博した植木等だが、元々はバンドマンとして米軍キャンプで歌っていた。クレージーキャッツはそのときに米兵から付けられた名前という。ディック・ミネに憧れて歌手になっただけあり、クルーナー調の歌が良く似合う歌手でもある。これはその植木とクレージーキャッツに強い憧れを抱き続けたミュージシャン大瀧詠一がプロデュースしたアルバムだ。
 大瀧の作った「FUN×4」という曲が聴きもののひとつ。オリジナルは大瀧の最大セールスを記録したアルバム「ロングバケーション」に収録。そのオリジナルでは「散歩しない?」という女性パートを太田裕美が歌っているが、植木等のお相手は渡辺満里奈。また浜口庫之助「花とおじさん」を裕木奈江とデュエットしたり、「新二十一世紀音頭」を三波春夫と歌ったりしている。マニアはこういう固有名詞の羅列にイメージを掻き立てられるのだろう。大瀧の曲を植木が歌い、女性パートには渡辺満里奈が、となると聴きたくてたまらなくなるのがファン心理なのではないか。かくしてプレミア商品は売れていく…。



特許法概説 by 幸朔, 吉藤; 健一, 熊谷
出版社: 有斐閣; 第13版版 (1998/12)

何の変哲も無い法律の専門書だが、定価の数倍で取り引きされている。しかも10年以上も前に出た本だ。一般的に言って法律書は古くなると価格が大きく下がる。当たり前だが法律は毎年改訂されるからだろう。新法に対応していない本は不要どころか「百害あって一利なし」と言いきる法律の専門家もいる。
 それなのにこの本はなぜ高値で取り引きされているのだろう。気になったのでアマゾンで調べてみた。
 まず、「特許法概説」と「吉藤健一」というキーワードでAND検索すると15件ヒットする。同じ著者による同じ本だが、15件もあるのは、毎年のように改訂版を出しているからだ。最新版といっても98年だから10年以上前のものだ。そんなに古い本なのに(文芸書と違い法律書ではかなり古い)なのに、まだ需要がある。しかもその後改訂版が出ていない。謎は深まるばかりだ。
 そこでカスタマーレビュー(購入者の意見)を読んでみた。2件のレビューが書き込まれている。いずれも2001年のものだ。
 ここで判ったことは、著者がすでに他界しているということ。だからその後の改訂版が出ないのである。さらに専門家の間では名著と呼ばれていたこと。著者が病床で改訂版の原稿を書いていた、とも。
 なるほど。高値の理由が少しわかった気がする。