福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

 不動産も扱う古本屋?

よかばい堂店主はいまゼネコン勤務時代戻ったような仕事をする日々だ。もちろん古本屋を辞めたわけではない。 話の発端はいつもの通りの本の買い取りから始まる。福岡近郊の、人里離れた山の中の一軒家からお呼びがかかった。行ってみると広い敷地にこぢんま…

古本屋と建具

「昭和レト ロ」が人気なのは雑誌やレコードばかりではない。デザインの世界でも1960年代や70年代のものがに妙に人気があったりする。時計やラジカセなどから家具にいたるまで、ちょっと前まで時代遅れでダサいと思われていたものが、いまや回周遅れのトップ…

サブカルチャーの本が高い昨今

古本市場での全集や学術書・文芸書などのいわゆる「堅い本」の下落傾向が止まらない。インテリの必需品のような本、持ち主の知的威信を裏打ちするような本、とでも言おうか、一時期の日本の読書好きの垂涎の的だったような本が安いのである。 こうやって書い…

片岡義男のこと

片岡義男の名を最初に目にしたのは雑誌「宝島」だったと思う。おそらく一九七〇年代の初期だ。植草甚一あたりの周辺にいたコラムニストという認識だった。そのうち雑誌「ポパイ」にもコラムを書き出したり、角川文庫からオートバイ、サーフィンなどの当時の…

レコードの話  

最近レコードが良く売れる。弊店の在庫は歌謡曲やフォーク・ロックを中心に約八千枚。ほぼ毎日ネットで数枚売れている。たったの数枚ではあるが、年間にすれば千枚ほどになるのだから、古本屋としては立派な商品だ。 新聞雑誌やネットでレコードに関する記事…

  美空ひばりとSPレコード

数年かけて買い取ってきたSPレコードが大量にあったので重い腰を上げて整理を始めたところ、美空ひばりのものが二十数枚出てきた。 ひばりのディスコグラフィーを見ると、多くのヒット曲がSP盤時代にでリリースされていることがわかる。SPは一九六〇年ごろま…

よかばい堂、学校の先生から本を買うの巻

学校の先生は本をよく読む職業だから、買い取りに行くことも多い。大学の研究者には本を読むのが商売のような人もる。一方で小学校の先生は教育方法や指導法についての本が多い。こういう世界にもカリスマ先生がいるようで、「先生の先生」とでもいうべき存…

 よかばい堂、戦国武将の直筆書簡を持ち込まれるの巻

戦国武将の直筆の書き物が持ち込まれた。古書店は研究者ではないから、本物か偽物かを鑑定する能力はないのだが、商売になるかならないかの「あたり」はつけなければならない。 まずは持ち込まれたものが「筋がいい」ものか否かを確認する。筋がいいとは、出…

コロナウィルスについて (その2)

先月新型コロナウィルスの影響について書いたが、ひと月たったいま読み返すと、遥か昔の話のように感じる。それぐらいこのひと月の動きは激しかった。 映画館で一席とびに座らされたことを書いたが、いまやそれどころか映画館自体が閉まっている。小倉駅ナカ…

コロナウィルスについて

さて、コロナウイルスである。どこへ行ってもこの話題ばかりだ。先日映画館に妻と一緒に行ったら一席とびに座らされた。老夫婦はいざしらず、ホットなカップルであれば残念だろう。しかしもっと気の毒なのは映画館だ。半分しか座らせられない状態が続くと経…

よかばい堂、文学全集が売れた理由を探るの巻

昨年他界したドナルド・キーンの『日本の文学』が中公文庫から再刊されたとツイッターで目にしたので、たまたま手元にあった同じ著者の中公文庫版『日本の作家』をめくってみたらこんな箇所が目に留まった。「現在の日本人の全集に対する愛着は相当根強いよ…

大分三昧ひと月を送るの巻

この一か月で大分県内のあちこち、豊後大野市、竹田市、大分市、臼杵市と四回も大分に通ったが、これには訳がある。実はとある三大紙に全面広告を出したのだ。 とは言え、零細古書店が出すのだから料金は格安だ。まず掲載地域に福岡県は無く、大分県・佐賀県…

よかばい堂、ネット専業から脱して店舗売りを計画中の巻

弊店はおもにネット上で販売しているネット古書店だ。古本市などに出店することもあるが、まあ、おまけ程度の売り上げである。 かといってリアル店舗にまったく無関心かというと、そんなことはない。古本屋(に限らず本屋)の店舗の可能性についてはつねに頭…

秋の佐賀平野にドライブがてらの仕入れの旅に行くの巻

佐賀からの電話で、日本史の教師だった夫を亡くしその蔵書を売りたいと言う。 日本史の本は相当に専門性が高くないと買い取りが難しい。高校の先生は研究者ではないから、狭い範囲を掘り下げた研究書は期待できない。古本屋から見れば、そういう部数の少ない…

よかばい堂、本を売らない老人と友だちになるの巻

その老人のことを敬愛の念を込めて、名前から一文字を取り隆翁と呼ぼう。最初に電話を受けたのは4年ほど前。新聞広告を見た、本はたくさんあるので一度見に来いというので、近くだし行ってみることにした。 応接間の壁は窓をのぞく三方すべて本棚が並び主に…

お金持ちの蔵書について

この商売をやっていると、時としてお金持ちの家に上がることがある。その反対はあまりない。出張買取りに出向く先は本を大量に買う余裕があるから、貧困な家はあまりないのだ。 先日は老人ホームの最上階にある100㎡以上はあろうかという広大な部屋に呼ばれ…

 よかばい堂、移転とともに店舗を開く予定の巻

よかばい堂はこの10月より新しい事務所に移転する。それに合わせて一部を店舗にすることにした。現在井尻近くの木造アパート一階をぶち抜いて事務所に改造中。 20坪ほどの大きさの事務所の大半はネット古書店として機能することになる。数台のパソコンと作業…

 よかばい堂、古書店の弊店在庫を一括処分するの巻

とある古書店が閉店するので在庫を全部処分してほしいという。聞けば古書組合には加盟してないとのこと。近所の組合加盟店に頼んでみたが、あまりに大量なので断られ弊店に話が舞い込んできた。 行ってみると市内の郊外に開発された住宅地のショッピングゾー…

古本屋はなぜ他の古本屋に本を売るのか?の巻

古本屋同士の交換会については何度か書いた。今回はなぜ古本屋同士が本を交換(売買)しあうのか、ということについて説明してみたい。実は筆者もこの業界に入りたての頃はわからなかった。 「自分で売れば1万円で売れるのになぜ他の古本屋、つまり商売敵に…

よかばい堂、古書組合の交換会で汗を流すの巻

古本業界には古書組合というものがあり、各県ごとに独立した組合がある。古物商を持っている古本屋は入会金(概ね数十万円以上。県によって違う)を払っていずれかの都道府県の組合に入ることができる。以前は店舗を持っていることが加入の条件だったが、ネ…

よかばい堂、獄中からの手紙を受けるの巻

ある日九州の某地方都市から封書が届いた。手紙類はときおり受け取ることがあるが、こんな本を探しているが貴店に在庫があれば金額をお知らせいただきたい、というものか、本のリストが添付されていていくらで買ってくれるか知らせよというものがほとんどだ…

よかばい堂、離島に出張するの巻

壱岐で本の買取をしてきた。と言うと同業者から驚かれた。経費がかかるでしょう、と言うのだが実はそうでもない。高速艇で往復8000円。近県に車で往復してもガス代高速代で同じくらいかかる。本の配送も海運会社の「港止め」という「裏ワザ」を使えば驚くほ…

よかばい堂、大学研究室の蔵書をまるごと買い取るの巻

とある国公立大学の経済学の研究室。大型テーブルが真ん中にあるのが一般的なレイアウトなのだが、この先生の場合はその代わりに古本屋さながらにぎっしりと本棚が並んでいる。 概算で九千冊。大型ダンボールに入れると約二百箱。一箱30kgとして総重量6トン…

90年前にドイツ留学した人の旧蔵品

90年前にドイツに留学した大学教授(仮にQ氏と呼ぶ)の蔵書を買い取った。蔵書と合わせて捨てられる運命にあった書類も合わせて引き受けた。じつはこの書類(というか古文書の類)に古本屋は目がない。時として面白いものが「発掘」されるからだ。もちろん何…

貴重な資料がベストセラーを生むまで 

もしもこの世から古本屋がなくなっても、困るという人はそれほど多くないかもしれない。安い本が買えなくなってちょっと不便だという人が多少はいるかもしれないが。 一方でこんな例はどうだろうか? 磯田道史という歴史学者の『武士の家計簿』という少し前…

「どんな本が買ってもらえるんですか?」と聞かれた時の答え方

本を買います、という広告を出しているので毎日電話がかかってくる。そのすべてと話がまとまるわけではない。むしろ成約しない方が多いかもしれない。残念ながら買えない本が結構あるからだ。典型的には百科事典・日本文学全集・世界文学全集・美術全集など…

古本屋のという商売について

先日、「古本の仕事に興味があるので雇ってもらえるだろうか?」 という電話を受けた。弊店ホームページにスタッフ募集とあるのを見たそうだ。定年になって新しいことを始めたいという男性からだった。若い人なら後継者含みであれば検討したのだが、少し年配…

事業継承について考えてみた

不肖よかばい堂店主も還暦を迎え、いまさらながらではあるが事業継承について考えている。古本屋の多くは個人事業でやっているところが多く、親族に後継者がいれば円滑に継承できようが、そうではない場合は自分の手で店をたたむか、死んだ後に遺族がたたむ…

図書館の廃棄本について考えてみる

先日高知県立大学の図書館が本を廃棄したことで新聞に取り上げられた(8月17日の高知新聞。「高知県立大学で蔵書3万8000冊焼却 貴重な郷土本、絶版本多数」)。 記事によるとこうだ。「『完全焼却された図書』のうち、郷土関係は、土佐藩の国学者、鹿持雅澄が…

 よかばい堂、近隣で充実した買取のひと月を過ごすの巻

今月は近隣で興味深い買取りが多かった。 最初は年配の男性。歌舞伎や演劇が好きで本・雑誌はもとより公演のパンフやブロマイドなど大量のコレクションをお持ちだ。その多くには俳優たちの直筆のサインが入っている。たとえば市川雷蔵や大川橋蔵のサイン入り…