2019-01-01から1年間の記事一覧
弊店はおもにネット上で販売しているネット古書店だ。古本市などに出店することもあるが、まあ、おまけ程度の売り上げである。 かといってリアル店舗にまったく無関心かというと、そんなことはない。古本屋(に限らず本屋)の店舗の可能性についてはつねに頭…
佐賀からの電話で、日本史の教師だった夫を亡くしその蔵書を売りたいと言う。 日本史の本は相当に専門性が高くないと買い取りが難しい。高校の先生は研究者ではないから、狭い範囲を掘り下げた研究書は期待できない。古本屋から見れば、そういう部数の少ない…
その老人のことを敬愛の念を込めて、名前から一文字を取り隆翁と呼ぼう。最初に電話を受けたのは4年ほど前。新聞広告を見た、本はたくさんあるので一度見に来いというので、近くだし行ってみることにした。 応接間の壁は窓をのぞく三方すべて本棚が並び主に…
この商売をやっていると、時としてお金持ちの家に上がることがある。その反対はあまりない。出張買取りに出向く先は本を大量に買う余裕があるから、貧困な家はあまりないのだ。 先日は老人ホームの最上階にある100㎡以上はあろうかという広大な部屋に呼ばれ…
よかばい堂はこの10月より新しい事務所に移転する。それに合わせて一部を店舗にすることにした。現在井尻近くの木造アパート一階をぶち抜いて事務所に改造中。 20坪ほどの大きさの事務所の大半はネット古書店として機能することになる。数台のパソコンと作業…
とある古書店が閉店するので在庫を全部処分してほしいという。聞けば古書組合には加盟してないとのこと。近所の組合加盟店に頼んでみたが、あまりに大量なので断られ弊店に話が舞い込んできた。 行ってみると市内の郊外に開発された住宅地のショッピングゾー…
古本屋同士の交換会については何度か書いた。今回はなぜ古本屋同士が本を交換(売買)しあうのか、ということについて説明してみたい。実は筆者もこの業界に入りたての頃はわからなかった。 「自分で売れば1万円で売れるのになぜ他の古本屋、つまり商売敵に…
古本業界には古書組合というものがあり、各県ごとに独立した組合がある。古物商を持っている古本屋は入会金(概ね数十万円以上。県によって違う)を払っていずれかの都道府県の組合に入ることができる。以前は店舗を持っていることが加入の条件だったが、ネ…
ある日九州の某地方都市から封書が届いた。手紙類はときおり受け取ることがあるが、こんな本を探しているが貴店に在庫があれば金額をお知らせいただきたい、というものか、本のリストが添付されていていくらで買ってくれるか知らせよというものがほとんどだ…
壱岐で本の買取をしてきた。と言うと同業者から驚かれた。経費がかかるでしょう、と言うのだが実はそうでもない。高速艇で往復8000円。近県に車で往復してもガス代高速代で同じくらいかかる。本の配送も海運会社の「港止め」という「裏ワザ」を使えば驚くほ…
とある国公立大学の経済学の研究室。大型テーブルが真ん中にあるのが一般的なレイアウトなのだが、この先生の場合はその代わりに古本屋さながらにぎっしりと本棚が並んでいる。 概算で九千冊。大型ダンボールに入れると約二百箱。一箱30kgとして総重量6トン…
90年前にドイツに留学した大学教授(仮にQ氏と呼ぶ)の蔵書を買い取った。蔵書と合わせて捨てられる運命にあった書類も合わせて引き受けた。じつはこの書類(というか古文書の類)に古本屋は目がない。時として面白いものが「発掘」されるからだ。もちろん何…