福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2009年2月号掲載分


僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実
草薙 厚子 (著)
出版社:講談社 (2007/05)
 
 奈良の進学校に通う少年が、父の不在時に父の後妻(つまり継母)とその連れ子のいる自宅に放火し二人を死なせたという事件があった。メディアも頻繁に取り上げていたので記憶にも新しいところだ。
 ところがこの事件、この本の出版を期に別の様相を見せはじめる。
 通常なら外部に出るはずがない少年事件の供述調書がこの本で引用されているからだ。つまり、内部情報がジャーナリストの手に渡ってしまったということだ。
 奈良地裁講談社と著者の草薙厚子に抗議したり、法務省がこの二者に対し謝罪と被害拡大の阻止を勧告したりと思ったら、けっきょく検察が動き出し、刑法の秘密漏示容疑で著者の草薙厚子と、少年審判で長男の精神鑑定を担当した医師の自宅などを家宅捜索した。
 版元の講談社は早々に増刷を見合わせている。これにより、この本はメディアでは話題になっているが入手して読むことが困難な本となってしまった。
 「人権侵犯」にあたるとのことで図書館でも貸し出しが制限されているようだ。つまりどうしても読みたければ、古本市場で入手するしかない。
 というわけでこの本もプレミア価格で取り引きされているのだが、これも相場がかなり変動している。裁判が始まり記事が出だすと、人々の関心も高くなり中古価格も上がるようだ。この一年で10冊ほど扱ったが、価格も倍半分ほど乱高下している。
 今後価格がどう推移するかは、裁判の行方に左右されるだろう。講談社もホームページによると「重版を控え、出荷を見合わせて」はいるが「絶版」にしたわけではない。ジャーナリズムとしては公式見解を述べる必要があるから、額面どおりに受け取るわけには行かないが、重版の可能性が消えたわけではない。
 需要と供給のバランスで中古価格が決定されるわかりやすい例だといえるだろう。
 
 
大阪近鉄バファローズ選手別応援歌2002

猛牛合唱団 (アーティスト), 大阪近鉄バファローズ大阪私設應援團 (アーティスト), 猛牛吹奏楽団 (演奏)
レーベル: コロムビアミュージックエンタテインメント(株)

 子供の頃、平和台球場西鉄ライオンズの試合をよく観にいったが、当時は選手も観客もいたって牧歌的で、金管楽器を持ち込んでの応援はなかった。野次がうまいおじさんがひとりで来ていて、きまって同じ場所に座り、ときおり絶妙の野次を飛ばし周囲の観客を沸かせていた。閑散とした球場(観客動員数は数百から多くても二、三千人だったと記憶する)だったから、あの野次は選手にも聞こえていたに違いない。
 上手い野次というのは、それはそれで芸になっていて、いくら相手チームをこき下ろしても、嫌な感じやとげとげしさがなく、子供心に上手いもんだなあと多少の憧れを持って感じ入っていた記憶がある。
 鳴り物を入れての応援がいつ頃始まったのか知らないが、最初は大学野球の真似から始まったのではないか。早稲田の「コンバットマーチ」や慶応の「ダッシュ慶応」をそのまま使っていたと記憶する。それがいつしかどの球団にも施設応援団ができ、誰がつくるか知らないが選手別に応援歌ができて、しかもそれがCDとして発売されるということで、なにやら立派に商売として成立してしまうのである。
 さて、大阪近鉄バッファローズはもう存在しない。そのいまはもう無い球団の選手別の応援歌のCDが今になって僅かながらもプレミアが付いて売れる。
 誰が買うのだろうか。元近鉄ファンが懐かしむのか。たしかにファンには嬉しいものに違いない。中村紀洋タフィ・ローズの応援歌もある。しかし今になってなぜ売れるのだろう。中にはトレードで別の球団に移籍しても「ワシは近鉄時代のあの応援歌が気に入ってるから、あの曲を使ってくれ」とリクエストする選手もいるのだろうか。
 あるいは新たに「作曲」するための参考資料として必要なのだろうか。お買い上げいただいたのは千葉県の男性。千葉ロッテの応援歌づくりの参考資料だったりして?