福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2009年1月号掲載分

慶応義塾大学総合政策学部―問題と対策 (大学入試シリーズ (2001年版)
出版社: 教学社 (2000/05)
 とある私大の教授をしている同級生曰く「ウチの大学に入るには、山川の用語集(注:山川出版の社会科の用語集のこと)だけやっときゃ入れるんだよ。早慶は落とすための問題を作るけど、ウチは努力したら確実に点を取れるようにしてある。オレらが問題作ってるから間違いないよ」。
 なるほど。大学によって入試の傾向というのはたしかにあるようだ。それを知るために過去問に当る人も多いのだろう。今回紹介するのはいわゆる「赤本」と呼ばれている本である。大学受験の際に使った人も多いと思う。
 赤本は通常過去8年間の問題を掲載している。つまり現在新刊本屋の店頭で売られている赤本(2009年版)には、2008年を含めた過去8年間の問題しか所収していない。もしも熱心な学習者がさらに古い問題を手にしようとするなら、古い本を探すしかあるまい。  というわけで、この手の古い本にはそれなりの需要がある。お買い上げいただいた方の過去の落札物を見ると案の定大学受験参考書が多かった。受験生だろうか。それにしては法学部や理工学部と文系理系関係なくあちこち受験するものだな。ということは塾の講師だろうか。いや、入試試験を作る立場の大学の先生かも…。などとさまざまに想像してみる。ときどきいくら想像をたくましゅうしても、なぜこんな買い方をするのだろうかと不思議に思うケースもある。それを次にご紹介してみたい。


UNRELEASED FILMS NAE YUKI裕木奈江写真集
出版社: バウハウス 1999年
 裕木奈江といえば、一時期「男に媚を売る」などといわれ、ずいぶんとバッシングを受けていた記憶がある。その後、立松和平が原作を書いた連合赤軍事件を題材に取った映画「光の雨」では永田洋子をモデルとした新左翼の幹部役をしていて、へえこれがあの裕木奈江か、と思った方もいるだろう。
 その後ギリシャに留学してたと思ったらハリウッドで女優をやっているようだ。
 その裕木奈江が10年近く前に出したオールヌード写真集である。とはいっても、いわゆる旬の女優ではないし、レアモノというわけでもないからびっくりするほどのプレミアが付いているわけではない。
 しかし、出品するとコンスタントに売れる。同業者に聞くと、やっぱり売れるという。その彼曰く「ハリウッド女優になったけんじゃないと?」
 で、ある日妻がこの本を梱包しながら素っ頓狂な声を上げた「あれ、この本同じ人が買ってる!」
 たしかに調べると半年ほどで20冊ほど売れており、そのうちの1冊を除く残りのすべては同一人物が購入していた。
 いったいなぜこんなにたくさん同じ本を買うのだろうか? 不思議である。ぜひその理由を聞いてみたい。裕木さんの大ファンなのだろうか? 恋人なのだろうか? 妻は「兄弟じゃない? オールヌードなんかになって、家族が恥ずかしくて買占めてるっちゃないと?」という見事(!)な推理を披露してくれた。
 同業者の彼に聞いてみると、購入者はやはり当店の客と同一人物だった。
 不思議である。なぜかくもこの写真集を買うのか。きっと部屋の中にはこの写真集がぎっしりと積み上がっているに違いない。
 そのうち日本中の在庫を全部買い占めてプレミア価格で売り出すつもりだろうか?