福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2010年2月号掲載分

スローなブギにしてくれ
著者:片岡義男
 70〜80年代に人気があった作家だ。この小説が直木賞候補となり、売れっ子作家となっていく。当時、角川文庫の片岡義男のコーナーには数十タイトルが並んでいたのと記憶する。いまは同じ本をブックオフの100円コーナーで見ることができる。
 今回売れたのは文庫ではなくハードカバーの単行本。プレミアがついた理由は、帯が珍しかったから。同じ本が2冊あり異なる帯がついていた。売った方には「野生時代新人文学賞受賞」、キャッチコピーとして「若者のフィーリングをとらえた、新感覚の文学が、ここに誕生した!」とある。「若者のフィーリング」という表現がまさに当時のものだ。さらに裏には評者の尾崎秀樹氏の選評が抜粋されている。
 売らなかった本の帯には「角川映画化!」とある。そう、この小説は人気が出て浅野温子主演で映画化された。このときには版も重ねられ九版を数えている。すでに小説の人気が確定してしまってからの帯。むろん値がつくのはそうなる前のまだ小説が初々しいときの帯というわけだ。

 
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21世紀への旅行 宇宙編/
監修:科学技術庁 企画:読売新聞社科学報道本部 挿絵・装丁:手塚治虫

 プレミアの理由は挿絵が手塚治虫だから。表紙の写真を見ただけで手塚のタッチにピンときた熱心なファンもいることだろう。手塚には熱心なファンが多いから、挿絵だけを書いた本でも欲しい人がいる。
 昭和37年初版。池田勇人内閣の時代。東京オリンピックを2年後に控えた所得倍増計画のまっただ中。未来の明るさを疑わない、楽観的な時代の気分が表紙からも伝わってくる。
 売れた本には、所有者の名前が書き込まれていた。見開きに「3年2組 名まえ ○○○」とある。○○○には実際は人名が入る。「名まえ」と書くところから察するに小学校3年だろう。計算すると昭和29年前後の生まれと推測できる。とすると現在55歳前後か。珍しい名前なので、グーグルで検索してみた。するとみごとにヒット! 釣りのページに大きな釣果とともに写真に写っている。その下に福岡市早良区○○○様と書かれているからまず間違いないだろう。「この本、あなたが小学校のころお持ちだったものですよ。懐かしいでしょ?」と写真に向かって尋ねてみたくなった。

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男の編み物(ニット)、橋本治の手トリ足トリ
著者:橋本治
 橋本治は小説を書いたり評論を書いたりしているが、編み物もするらしい。しかも本を書いてしまうほどの腕前でもあるようだ。といっても、本業の小説・評論とは違いこの手の本が重版されることは稀のようだ。しかも類書の無さはには文句のつけようがない。いきおい品切れ本にはプレミアがついてしまう。本業の小説や評論の本にはプレミアがつくのは稀なのに。
 こういう「本業以外の本のプレミア化」にはいくつか例がある。たとえば経営学の大家ピーター・ドラッカーの小説『善への誘惑 』。ドラッカー経営学の本は広く読まれている、つまりたくさん売れているのでプレミアが付くことはないが、この小説はずいぶん高い値が付いている。あまり売れなかったのだろうと推測できる。
 テレビでときどき見かけるリチャード・クーというエコノミストがいるが、彼はカメラのコレクターでもあるらしい。『東ドイツカメラの全貌―一眼レフカメラの源流を訪ねて 』という本の共著者でもある。彼の本業の経済の本はいわゆるアマゾンの「一円本」が多いのだが、この本には定価の倍ほどの価格がついている。
 
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相沢家の愛しき卒業生たち
著者:相沢てる子
 まずは写真をご覧いただきたい。松田聖子桜田淳子岡田有希子、そして帯でちょっと隠れているが酒井法子安達祐実の写真が表紙を飾っている。一年以上店ざらしだったが、今回ののりピーのスキャンダルのおかげ(?)でめでたく売れて行った。
 著者の相沢てる子は芸能プロサン・ミュージックの相沢相談役の妻。去年の酒井法子の逃走劇の際にメディアに再三登場した相沢相談役の妻だ。
 それにしても、これらのタレントで今も残っているのは松田聖子安達祐実だけだ。他の3人は自殺・引退・犯罪で芸能界を去っている。なんという浮き沈みの激しさ。
 読まない本を紹介するのが常のよかばい堂店主ではあるが、たまたまこの本にはもう一冊在庫があったので、この文を書くため目を通してみた。
 世話をした20数名のタレントについて書けること自体、余人を以って代え難い。松田聖子森田健作の項も興味深いが、中でも印象に残ったのは岡田有希子が自殺する前に、デビュー直前の酒井法子を見て著者にこういったという。「よかったね。わたしのあとがま、できたじゃない」
 はたしてどういう意味だろうか。気になる方はどうぞお買い上げの上お読みください!
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