福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2010年4月号掲載分

プリニウスの博物誌 全3巻
翻訳:中野 定雄、中野 里美 , 中野 美代
雄山閣

 この本のことは澁澤龍彦荒俣宏の著作で知った。古代ギリシャの百科事典で、現代のそれとは大いに異質の事典だが読み物としてきわめて魅力に富む、というように記憶していた。それを広島のとある大型古書店の百科事典・美術書のコーナーで見つけた。
 三巻セットの定価は数万円だが、普通の本に毛の生えた程度の価格で売られていた。きっと重たくて場所をとるだけの迷惑な商品といった位置づけなのだろう。迷うことなく買えたのは、多少なりともプリニウスという名前に見覚えがあったからだ。
 翻訳者が全員中野姓なのは、親子の代で翻訳作業をしたからだという。あとがきを読んで知ったのだが、親子2代だか3代だかどちらだか覚えていない。確かめようにも売ってしまったのでわからない。図版も多く興味を引く本だったし、読んでみたいとは思っていたが、出品したら意外と早く売れてしまったのだ。まあ、古本屋なのだからそれでいいのだ。読んで何ぼではなく、売って何ぼの商売だから。
 
  

 
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星百科大事典 改訂版
R・バーナムJr 斉田博訳
地人書館
 昭和63年初版の大型事典。出品するときにネット上をくまなく調べたが同じ本はどこを探しても見つからなかった。これは自ら相場を形成できるチャンスでもある。もちろんたった一人でもいいから、強い需要がなければ高値で出品しても売り手の「ひとり相撲」に終わってしまう。アマゾンマーケットプレイスを見ているとこの「ひとり相撲」の得意な出品者がいて、どう見ても誰も買いそうもない本に目の玉の飛び出るような高値をつけていることがある。
 もちろん自分とてそれをしてない保証はないのだが、この本はそうではないと確信し、プレミア価格で出品した。確信を支えたのは類書が少ない(だろう)ということ。さらに翻訳物であるということ。高額の望遠鏡を買う天文ファンなら、座右の書にもそれなりの投資を怠らないだろうとの読みもあった。
 それで思い出したのは、フェラーリのバイヤーズガイドをプレミア価格で売ったこと。数千万円の買い物をする人だもの、その購入の指針に多少のお金をかけるのは当然だろうとの読みが的中した経験だった。