「月刊フォーNET」2010年5月号掲載分
ひとくわぼり
上野英信(著) 千田梅二(版画)
裏山書房
写真でお分かりいただけるだろうか。版画が貼られた手作りの本である。いかにも由緒ある古本屋が扱いそうな本だ。ということで弊店では稀なタイプの商品。
店主もこの本をどう評価していいかわからなかった。一枚一枚和紙に刷られた版画がページに貼り付けられている。それが本当に版画なのか、版画に似せた印刷物なのか真贋を見定める鑑識眼を持たない。「だいたいさー、版画ってのはもともと印刷技術だったんじゃないのか?」などという疑問を持ちだすとますますわからなくなる。
よって事実と推定を注意深くより分け、推定を排し事実だけを淡々と記し商品説明を書いた。
「82年発行。限定700部の一冊。函、セロファン。カラーの版画が61枚付いています。この版画は印刷物なのか手刷りのものなのかはわかりません。版画は1枚1枚和紙に刷られたものを本体に貼ってあります」
この「推定を排し事実だけを記す」というのがむずかしい。「和紙」なんて簡単に書いているが、本当は未確認(薄い「洋紙」の可能性が100%排除されたわけではない)だから「薄い紙」と書くほうが正しいのだと今にして思う。
オリ★スタ 2010年1月25日号
オリコン・エンターテインメント
1月25日号、つまりつい最近まで本屋の店頭に並んでいた雑誌である。それがプレミア? 鬼畜の業か、と言われそうだが決してそんなことはない。ちょっと前のバックナンバーというものほど手に入りにくいものはないのだ。
数年前の雑誌なら、ヤフオクをのぞけば二束三文で売られていることもあるだろう。もっと前ならば多少値が張っても、商品としてどこかに並んでいる可能性は高い。
だが、数ヶ月前の雑誌は、新刊書店にはむろんなく、出版社にも在庫がないとなれば、古本屋を覗くしかないのだが、そこに来るにはまだ微妙に新しすぎたりするのである。つまり市場に出回っていないので、勢い高めの値が付いてしまうのだ。
これはたまたま店主が参考資料として購入したのだが、読み終えたのですぐに出品したもの。大したプレミアはつかないが、それでもゴミに出すよりは、こうやって売ったほうがはるかに楽しい
アマゾンの出品を注意深く見ていると、もっぱら数ヶ月前の雑誌ばかりを出品している人がいる。大した商売にはなりようがないと思うが、面白い商売もあるものだ。