福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2011年1月号掲載分

英単語記憶術―語源による必須6000語の征服 (カッパ・ブックス)
岩田 一男 著 1967年 光文社

 最近はこの手の本は多く出ているようだが、この本の初版が出た1967年当時は珍しかったのだろう。とりわけ大衆向けに書かれたスタイルの本はきわめて少なかったに違いない。
 本の中身(情報)だけに限れば、英語の参考書が大量に出版されている今日からみれば特に珍しい内容ではないかもしれない。ひとつ例を挙げるとcure(治療する)から始まって、マニキュアだのペディキュアだのと派生させていくという記憶法。逆に言えば、今でも違和感なく使えるだろう。
 ただ実際にこの本を手にして感じるのは、「昭和の香り」とでも言うような、いまの本には無い雰囲気。
 たとえばいまや大御所イラストレーターの真鍋博が毎ページにカットを入れている。これはかなりすごいことではないか。なんせ264ページもあるのだから。カット集として楽しむこともできそうだ。カットを真似して描きながら読むと楽しく覚えられそうな気がしてくる。
 おまけにもうひとつ。なんとこの本には栞の紐がついている! しかも5ミリ幅の立派なものが。いまの新刊本屋に並ぶ新書に慣れた目で見ると実に新鮮だ。

 『これならわかる電子顕微鏡 マテリアルサイエンスへの応用』
奥健夫 著
化学同人  2004年
 
 電子顕微鏡などとは縁がない人が大半だろう。この本は初学者にもわかりやすく書かれているものの、不特定多数の素人に向けて書かれた入門書ではなく、あくまでも研究者のための入門書だ。
 息抜きをかねたようなコラムがいくつか掲載されており、著者の本音が垣間見えて面白い。いくつか紹介しよう。
 「『酸素原子や窒素原子を見てくれ』とか、場合によっては『水素を見てくれ』などという無茶な依頼がきたりする」と始まる。ええっ!?だってそういうのを見るための電子顕微鏡じゃないの?と思うのだが、コラムはこう続く。「そういうデータは1年に1回撮れればラッキーというレベルのものなのである」。へえ、そうなのか。水素を覗けばいつでもたちどころにああいう画像が拝めると思ったら大間違いなのだ、ということがわかる。 「恍惚の瞬間」というコラムには「高分解能電子顕微鏡で美しい原子の世界が見えてしまうと、忘我の境地に至り、その感動に苦労も忘れてしまう」とある。表紙の写真はある物質の電子顕微鏡写真だそうだが、こういう曼荼羅模様を自然界の物質のうちに見つけたときの喜びというものも大きいらしい。
 ただし「ちょっとしたミスが百万円単位の修理費につながってしまう」らしい。
お買い上げいただいたのは筑波学園都市の住人。なるほど。まわりに電子顕微鏡がいくつもありそうだ。