福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

2011年3月号掲載分

刑事訴訟法綱要 七訂版
団藤重光著
創文社 昭和42年


 以前このコラムで、古い法律書への需要はきわめて限られている、なぜなら法律は毎年のように改訂されるから、と書いた。もちろん例外はあり、何らかの理由でプレミアがついて取引される古い法律書もある。前回はそれが特許法だった。今回は刑事訴訟法である。40年以上も前の法律書がいまだに読まれるのはなぜだろう。
 「復刊ドットコム」というサイトをのぞいてみる。ここには絶版本への復刊を望む声が集まっている。この本にも「歴史的名著」だとか「多くの本で引用されている」というコメントが寄せられている。「裁判員制度が始まった今だからこそ」という意見もある。もっともな意見ではあるが、もっともすぎてことさらこのコラムで取り上げるほどのものはない。
 うーむ困った。仕方なく本をめくり冒頭の一節を読んでみる。すると、おお、ど素人でもハッとする記述である。「刑事訴訟とは、刑罰権を実現する手続きである。およそ犯罪が行われたときは、処罰条件の具備するかぎり、抽象的には国家の刑罰権がただちに発生する」。
「よい入門書は、まず最初に『わたしたちは何を知らないか』を問います。(中略)これは実にラディカルな問いかけです」(内田樹『寝ながら学べる構造主義』のまえがきより)。
 犯罪は国家に刑罰権を発生させる、というような露骨な表現は注意深く避けられているけど、犯罪・国家・権利という言葉の意味をめぐる「ラディカルな問いかけ」が始まる気配を感じるではないか。こんな門外漢でも読んでみたくなった。





スマーフ物語 (4)  スマーフと不思議なタマゴ
ペヨ 作 小川 悦子;編  村松 定史 訳  偕成社 1989年

 写真をみると絵本に見えるが、これはいわゆるフランス語圏で「バンド・デシネ」と呼ばれる漫画である。キャラクターの絵柄はいかにも子供向けだから、絵本の仲間に入れてもいいかもしれない。
 主人公は森に住む小人という設定。ヨーロッパ人はこういうのが好きなようだ。指輪物語ホビットや白雪姫の小人たちなど「森のこびと系キャラクター」はいくつか思い浮かべることができる。
 原作者のペヨはベルギー人で、日本語版が刊行された1985年には来日してキャンペーンに顔を出したが、このキャラクターは日本ではあまり根付かなかったようだ。世界に冠たるアニメ王国日本で生き残るのは大変だったのかもしれない。
 かくして現在では入手困難なプレミア商品と化した。10数巻のシリーズ物だが、そのいずれの巻も品切れとなっている。オークションへの出品も少ないようで、手に入れるのはなかなか大変だ。
 趣味ならば探す過程も楽しいだろう。古本屋で安い本を一冊づつ見つけていくたびに喜びがあるだろう。
 しかし仕事で(たとえばキャラクタービジネス担当者が新ネタを探すため)手に入れるとなると、手っ取り早く集めて本業に集中したいはずだ。会社の経費が使えるならなおのこと、本を探すような雑用にかまけていられないだろう。そういう人たちに支えられて、われわれの商売は成り立っている。