福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

2011年4月号掲載分

海運実務ロシア語会話 (1967年) [古書] [-]
富井 英雄 (編集)
出版社: 海文堂出版 (1967)
会話集である。「海運実務」というのがミソだ。類書は少ない。
冒頭の会話はこう始まる。。
 代理店係「お早うございます。おや、これはこれは船長さん! 久しぶりですね。またお会い出来るなんて。ところでご機嫌如何ですか?」船長「至極元気です。ところで樋山さんは?」代理店係「ぼちぼちというところです」もちろんこの会話にロシア語との訳文がついている。
 44年前の本だからだろうか、なかなか牧歌的だ。船長がこうして入港先で友好関係を深めている一方で、実務担当者たちの会話はもっと専門的かつシビアだ。特に二等航海士の会話には感情的なセリフも混じる。荷役作業中にウインチが故障するとこんな会話になる。
「だからいったでしょう。あなた方のウインチマンは扱い方が不注意で、乱暴で、その上巻き過ぎるんだ。」
 巻末には船の儀装関係の専門用語が並ぶ。門外漢には日本語でさえ初耳の単語ばかりだ。船尾水槽、燃料補給約款などをロシア語でどういうか。その答がしっかりと書かれている。
 こういう専門書を必要としている人が、実際に仕事をしているところをイメージすると、とても実直に仕事をしているにちがいないと思えてくる。



学習漫画 アメリカの歴史なんでも事典 [単行本]
菊池 英一
単行本: 286ページ
出版社: 集英社 (1992/10)

学習漫画世界の歴史」(全16巻)の別冊のうちの1冊。
 子供向けの漫画による歴史シリーズは数社が出している。いずれも20巻前後あり、新品で2万円前後する。日本史と世界史の二種類があるので、両方揃えるとなるとけっこうな出費だが、新入学のお祝いとしては手堅い需要があるようだ。
 この『アメリカの歴史なんでも事典』だが、現在集英社から刊行中のシリーズには入っていない。その代わりに『人物事典』と『できごと事典』という別巻がつく。版が改訂されるたびにこうした別巻も変わってしまう。それがプレミア化の一因なのだろう。 
 それにしても「なんでも事典」とうたっている割には情報量もさほど多くなく、むしろアメリカの歴史を1冊にまとめただけという印象。しかも漫画のページよりも文字の方が多い。
 手塚治虫松本零士の名を冠した教育漫画にプレミアが付くことはあるが、これはそれも当たらない。というわけで、プレミア化の理由を想像するが決め手に欠く。
 お買い上げの主は女性名で四国の某都市在住の方。熱心な小学校の先生がプリント教材をつくる参考にしているのかも。子供向けの語り口を研究するためなら、たしかに類書は少ないだろう。