福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2011年5月号掲載分

「ふくろうとねこ」 トッパンの人形絵本 31
原作:エドワード・リア
訳 :飯沢 匡 人形と装置のデザイン:土方重巳
株式会社 フレーベル館
発売日: 1962

 子供の頃好きだった絵本を懐かしむ人は多いだろう。
 大人になってもう一度その本を手にしたくなったとき簡単に入手できればいいが、本によってはけっこうな価格になっている場合がある。絵本とは案外高くなるものなのだ。
 この本は出品してすぐに売れた。熱心なファンがいるらしいことは、いくつかのブログで熱心に言及されていることからわかる。日本語訳も数種類あるようだが、この「トッパンの人形絵本」のシリーズが、幼児期の光景の記憶とともに懐かしい、というような懐古が語られている。
 原作者はイギリスの詩人で、ストーリーは単純だ。船乗りのふくろうと可愛い猫のカップルが航海に出る。旅先で豚の商人から指輪を買い、七面鳥の神父のもとで結婚式を挙げる、というもの。
 魅力は絵(正確には写真)にあるのだろう。「昭和の手づくり感」とでも言えそうな、今では身の回りに少なくなったあたたかみのようなものは、無粋なよかばい堂店主にも伝わってくる。月に光る波もセロファンをくしゃくしゃにして使って効果を出しているところなんぞ、創意工夫というかブリコラージュというか、モノの無い時代の知恵を感じる。 制作に名を連ねている飯沢、土方のふたりは当時のNHKの人形劇「ブーフーウー」のスタッフでもある。飯沢匡は劇作家としても有名だ。
 


別冊ステレオサウンド往年の真空管アンプ大研究 ムック
出版社: ステレオサウンド (2008/5/22)

 以前いちど書いたが、版元品切れのフェラーリのバイヤーズガイドをプレミア価格で売ったことがある。
 オーディオの世界もフェラーリに負けず劣らず金のかかる世界らしい。それを知ったのはテレビの「タモリ倶楽部」という深夜番組。オーディオマニアを自認するタモリコブクロの二人が高級オーディオ専門店の試聴ルームに入り、1個数百万のスピーカーなどを聴いて感想を述べ合うという企画。出演者たちがマニアックになればなるほど可笑し味が増す、という内容だった。
 凝りだすと電源までが気になりだし、変圧器が数百万円そのケーブル1本に数百万円(だったと思う)というとんでもない世界が待っているらしい。
 さて、今回は真空管のアンプである。その音に魅せられる人がいるという話は聞いたことがあった。現在真空管を作っているのはロシア(いや、そうなる前の旧ソ連だったか)だか中国だけだと耳にしたような気もする。今残っている店頭在庫がなくなれば真空管は地上からは消滅してしまうということなのだろうか。CDがレコードに取って代わってからまたたくまにレコード針のメーカーが倒産したことを思い出す(もっともその後再建されたが)。 
 いかにもマニア泣かせな金のかかる世界ではなかろうか。いや、マニアはむしろ喜ぶのだ。常人には理解できないことに嬉々として大枚をはたくのが、マニアの真髄なのかもしれない。そういう方々はわれわれの大事なお客様でもある。