2012-06-22 「月刊フォーNET」2012年7月号掲載分
漢字音―すぐに役立つ!!日中朝ベトナム・共通語彙408
藤井 友子 (著)
出版社: 朝日出版社 (1986/11)
- 作者: 藤井友子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 1986/11
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ベトナム語が漢字文化圏に属しているとは最近まで知らなかった。迂闊といわれればそうかもしれない。越南と書いてベトナム。たしかに音も似ている。
1ページにつき1単語が扱われている。たとえば「安全」は中国語アンチュアン、朝鮮語アンジョン、ベトナム語アントゥアンと発音されるそうだ。さらにその単語をふたつの漢字に分解し、それぞれを使った別の2単語が紹介される。安全の例でいえば「安」を使った「安心」と「全」を使った「全部」。これで1ページあたり3単語、全部で千二百以上の単語が学べるという寸法だ。ごく一部にすぎないにせよ漢字でベトナム語に接近できるとは思ってなかったから、得をした気分になる。
数ページごとに挟まれるコラムも興味深い。ベトナム語は13世紀までは漢字で書かれていたそうだ。ローマ字表記が始まったのも16世紀の宣教師たちによるというのだから、啄木の『ローマ字日記』をもって嚆矢とする日本よりも遥かに古い。
明治期に西洋文明を輸入した日本でいちはやく「哲学」「科学」「社会」などの翻訳語が作られたことは知られているが、これらも当時の日本に留学した中国人が持ち帰り、さらにそれがベトナムにも伝わっていたったのだろう。漢字文化圏恐るべし。
それにしても今日まで漢字を捨てずにきた日本語だからこそこんな本が成立するのであり、漢字を捨てた朝鮮語とベトナム語では想像もできないだろう。先人たちに感謝。
―海外で教える [単行本]
文部省海外子女教育研究会 (編集)
出版社: 時事通信社 (1996/03)
- 作者: 文部省海外子女教育研究会
- 出版社/メーカー: 時事通信社
- 発売日: 1996/03
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16年も前に出た本だが、類書が少ないからかプレミア価格で売れた。
海外の日本人学校に赴任する教師向けのガイドブック。赴任経験者の体験記が充実している。
日本人学校の一覧表を見て「あれっ?」と思った。アメリカ西海岸にはほとんど存在しないからだ。日本人は多いはずなのになぜだろうと思いさらに見ると、「補習授業校」が多数存在していることを知った。
つまりこういうことのようだ。日本人学校は全日制でそこだけで必要な教育が受けられるが、補習授業校は現地(つまりアメリカ)の学校に通った上でさらに日本語の補習を週末などに追加的に受ける学校なわけだ。
われわれは英語を覚えたら儲けもの、と思っているから英語圏ではこういう現象がみられるのだろう。海外赴任をしない人にはどうでもいい話題だが、日本人全体に見えるある種の傾向が垣間見えるといえないだろうか。
「赴任地トラブル対処法」という章には「犯罪」という項がある。リオデジャネイロでは学校近くで銃撃戦があるそうな。町の両端に貧民街があり、対立する麻薬組織が銃撃戦をやるらしい。「銃撃戦のための避難訓練を随時行」っているほどだ。東京から見ると福岡もそう見えてたりして。