福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

2012-07-22 「月刊フォーNET」2012年8月号掲載分

パパとママの娘―女子高校生のアメリカからの手紙 (1961年) (カッパ・ブックス)
出版社: 光文社 (1961)


パパとママの娘―女子高校生のアメリカからの手紙 (1961年) (カッパ・ブックス)

パパとママの娘―女子高校生のアメリカからの手紙 (1961年) (カッパ・ブックス)


 昭和の明るさがぎっしり詰まっているかのようなタイトルや表紙カバー。1961年といえば、東京タワーも完成し次はオリンピックという頃。巷にはハイテンションな気分が横溢していたのかもしれない。
 著者は高校から3年間アメリカで過ごした。その間ほぼ毎週東京の両親に宛て手紙を書いており、それがこの本の元になっている。タイトルのパパとママというのは、アメリカでの受け入れ家族でもあり、東京に住む実の両親のことでもある。
 親の愛情に包まれた好奇心いっぱいのお嬢さんの私信をそのまま本にしてしまったのも時代の持つエネルギーか。
 私信だから固有名詞が頻出する。クラスメートも実名で登場し、それぞれ「雙葉でのクラスメート」「東大教授○○氏の娘さん」「作家石川○○さんの長女」などと注記がある。これだけ拾って読むのも面白い。「森川宗治氏 父の会社に勤務している方」とある。誰か有名な人かと思い本文に当たると、アメリカで運転が上手くなったので「帰ったら、ぜひ森川さんにお願いして、運転させていただきたいわ」とある。会社の運転手さんも実名で登場するのだ。
 お隣さんまでフルネームで出てくる。今ではありえない。個人情報などいう言葉の無い、というよりも名前が出ることをみんな喜んでいたような気配すら漂う。牧歌的な時代の産物だ。




―糧食を軸に解き明かす"知られざる陸軍"の全貌 (〈歴史群像〉太平洋戦史シリーズ
出版社: 学研 (2002/10)



学研の雑誌「歴史群像」の「太平洋戦史シリーズ」中の1冊。帝国陸軍で使用された衣食住にまつわる品々のが紹介されている。シリーズの多くは兵器や武器に焦点をあてたものが多い中、衣食住についてまるまる1冊充てられたものは他にないらしく、プレミアがついた。
 衣食住とはいうものの最も多くのページが割かれているのはやはり食について。『陸軍調理法』をもとに当時の食事が再現されたカラー記事が興味深い。
 写真を見る限り、われわれの日頃の食事とさほど変わるようにも見えない。筑前煮・カレー南蛮(うどん)・魚フライ・カツレツなどなど。
 違うのはむしろ量か。一食ごとに2合飯が基準。平時のいまや4人家族で2合でも余るほどである。
 「将校さんたちの憩いの場所」という記事には「着慣れた軍服脱ぎ捨て軍刀置いて、流行りの背広に身を包み、夜の街へと繰り出すこともある。〔中略)折角私服決め込んだはいいが、帝国陸軍軍人故のこの頭(中略)長髪、背広も自然と似合う海軍士官がうらやましい」
 陸軍は将校に至るまで丸刈りが基本だが海軍では准士官以上には長髪が許されていたという。