福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2015年7月号掲載分

『大地の商人』
谷川雁 昭和29年
発行 母音社

 
 以前この欄で紹介した詩人・故有田忠郎の蔵書から出てきた1冊。谷川雁は1923年水俣で生まれ旧制第五高等学校から東大を経て西日本新聞社に入社。解雇されたのち文学活動を開始し、吉本隆明等と「試行」を創刊もしている。
 谷川と有田の間に面識があったかは不明だが、5歳年下の有田が第五高等学校の先輩の詩人を意識していたのは間違いなかろう。
 戦後間もない本であり例に漏れず質素な造りだ。奥付には久留米の母音社の住所とともに「200部限定」とある。おそらくは知人友人文学仲間に配っておしまいだったのではないか。そのうちの1冊が巡り巡ってここにある。
 こういう稀少な本は店の看板にもなるから急いで売る必要はない。むしろ長く陳列しておくことは店のステイタスになると考え、思い切ったった高値を付けていたが、ボーナスシーズンゆえか売れてしまったのは嬉しいやら寂しいやら。
 お買い上げいただいたのは出版関係者。ふさわしい場所に買っていかれたような気がする。

『Greatest Hits of Tatsuro Yamashita』他
山下達郎 1982年
RVC株式会社 

 
 写真でおわかりの通りカセットテープである。今や無用の長物かと思っていたが、どっこい生きていた。ミュージシャンごとに数本まとめて出品しているが、これが不思議と売れるのだ。
 理由はよくわからない。音源そのものが珍しいから? たしかにミュージシャンによっては同じ曲でも出すたびに別のテイクを使ったりミックスを変えることがある。ただ、テープにだけ違う音源を使うということは、無いとはいわないがかなりのレアケースだろう。
 一方でオーディオマニアを中心に音質の良さが再評価されてアナログレコードがリバイバルしているとも聞く。ただテープ(しかも音質重視のオープンリールじゃなくてカセット)の音質が好まれるという話は聞いたことがない。
 結局「熱心なファンは好きなアーティストの名の付くものは何でも欲しい!」というしかなさそうだ。
 いま出品しているのは他にユーミン永ちゃんオフコース山下久美子ジュリー陽水YMO浜田省吾など80年前後のものだけど、どれもすぐに入札が入った。
 謎が解けたら改めてご報告したいと思っておりまする。