「月刊フォーNET」2015年9月号掲載分
『コカコーラ ノベルティ 加山雄三 ピクチャーレコード』
レコードというよりも正確にはソノシート。若い人にはわかりにくいだろうから説明すると、ソノシートはきわめて薄いペラペラのプラスチックの盤にレコードと同様の溝が刻まれているもの。当時はよく雑誌の付録についていた。これはそのソノシートに写真を印刷しさらにプラスチック板に貼り付けて壁掛け用にしている。
おそらくは販売促進用のノベルティなのだろうがかなり珍しく、オークションでも過去数年で数回しか出品されていない。
ソノシートなのに3曲も収録されている。「旅人よ」「マイジプシーダンス」
「コカコーラの唄」。2曲目の「マイジプシーダンス」という英語の歌詞の曲は作詞作曲は弾厚作(加山の別名)になっている。あまり知られてないのはジプシーという語が差別的だといって避けられてアルバム入りが見送られたのか。
じじつ山口百恵の「謝肉祭」という曲は歌詞にジプシーとあるために忌避されて一時期ベストアルバムに入らなかったという話がウィキペディアにある。ヒットしていた当時を知るものとしては、あれだけテレビ・ラジオで「ジプシー」を連呼していたのに、今さらベストアルバムに入れないというのもなんだろうと思ったら、近年はまたゆるくなって収録されるようにもなっているようだ。この手の自主規制はかなりいい加減なのだということがわかる。
『匠技 大工中村外二の仕事』
発行 青幻舎 (平成8年)
大工の施工実績の写真集。茶室を中心とする数寄屋建築が多い。絶版となっておりきわめて入手困難なため、高額で取引されている。
建築の本には高いものがあるが、大工の本が高いのは初めてだ。というより、大工の作品集はこの本以外に知らない。
建築業界のヒエラルキーでは建築家(設計者)が一番偉く施工者は言われたとおりに作る存在だ。ただ、日本の大工は伝統的に設計も施工も司るので、言われたとおりに作るだけじゃなく、設計者としてのプライドも持つ。本書中の「中村外二普請歴」(施工実績)によると、設計者の項目に彼の名が記されている工事がいくつかある。
序文に千宗室が文章を寄せていて、中村外二が千家の出入りの大工だとわかる。茶室の実績が多いのはそれだからだ。
ほかにも梅原猛、磯崎新などの賛辞もある。建築家の磯崎は仕事仲間として文章を寄せている。
大工というよりも、むしろ職人とか芸術家のようだ。それでも大工で人間国宝というのは聞いたことがないが、あれはなぜなんだろう?