「月刊フォーNET」2015年11月号掲載分
『日本アマチュア無線局名録 CQハムラジオ増刊』
CQ出版社 昭和30年
60年前のアマチュア無線局の名簿。ついでに言うと名簿の売買自体は違法ではない。この欄でも紹介したことがあるが、昔のプロ野球選手名鑑には選手の住所が掲載されていた。長嶋も王も容赦ない。芸能雑誌にはスターの住所が掲載されており、ファンは花束を抱えてスターの自宅に届けに行った。そういう時代があったのだ。それらの古書は今もって合法的に流通している。
本題に戻ると、この名録には60年前の無線局の局名(コールサイン)と氏名住所生年月日勤務先が、さらに「その他」欄には無線機の種類や趣味が書かれていて、これが興味深い。
昭和3年生まれの広島のTさんは小学校教諭で趣味は「酒、女性吟味」である。山口の27歳医師N氏の趣味は「酒、女、唄」。20代の率直さか。時代のおおらかさも感じる。
東京の高校生U君は趣味「軽音楽・美術」と穏便だが、名画座勤務の27歳N氏は「沈思黙考、器物破損」とあり過激だ。
タモリもコールサインを持っているそうだが、当時はまだ10歳。森田一義少年の開局は数年後だ。
『古いマッチラベル』
昭和初期
本ではないが紹介させていただこう。朝倉の旧家から出たマッチ箱のラベルのコレクション。アールデコ調のデザインが多いところから察するに昭和の初期の収集品か。
喫煙者も減り百円ライターが普及してしまった現在では考えられないが、昭和の頃は喫茶店やバーなどの飲食には無料の広告用のマッチが置かれていた。
個人的にはロイヤル(のちのロイヤルホスト。当時は単にロイヤルと呼んでいた)のマッチをよく覚えている。黒い軸に金色の火薬。擦ると青い炎が出る。花火に使う火薬を混ぜていたのだろう。昭和40年台だ。
コレクションに戻る。東京大阪京都から鳥取博多などの、喫茶店バー旅館カフェー食堂などの飲食店のものが大半。それ以外で珍しいのは貸しボート屋切手屋新聞社など。
同じデザインのラベルが7枚並んでいるのに目が留まった。見ると電話番号と屋号は同じだが、真ん中の人名がバラバラ。富千代、千代栄、富若、千吉…。芸者の源氏名か。名刺代わりに配ってたのだろう。マッチ製作費は給料から天引きされていたのだろうか。