福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2016年8月号掲載分

1万枚のCDの仕入れとその出品について

よかばい堂では先月大量のCDを仕入れたのでその出品作業で大わらわである。その数なんと1万枚。
 CDの厚さは1センチだから1万枚は1万センチ、つまり100メートル。重ねれば30階ぐらいのビル(TNC会館がその高さ)と同じ高さになる。
 幸い非常に状態の良いコレクションなので検品が楽だ。実務上はこの「状態の良さ」が大きなポイントになる。とくにCDの場合は、本以上に「帯」の有無が大きい。
 帯が付いている方が客が付きやすいく早く売れるということもあるが、それだけでない。じつは帯があると出品しやすいのだ。なぜなら通常日本の場合はバーコードは帯に印刷されているから。これがあると出品が格段に速い。
 状態が良くて帯が付いているCDは、出品の手間がかからないので、その分も高く買っても割りが合う。
1日の賃金5000円のバートタイマーが200枚出品できる「帯付き美品CD」の場合、1枚当たり25円のコストで済むが、100枚しか出せない「帯なし傷ありCD」の場合は50円に上がる。1万枚だと25万円の差だ。その分美品は高く買うことができるわけだ。
 そう、古本屋は商品を仕入れる際に、出品の手間がどれくらいかかるかをシビアにチェックしなければならない。バーコードを読めばすぐに出品できるものと、いちいちタイトルを打ち込んで検索しないと出品できないものとは評価が違う。もちろんクリーニングや補修の必要の有無などで出品コストは変わる。
 ただ、古本屋が扱う商品でバーコードがついているのはそう多くはない。ついてないものもたくさんある。そういう場合はさらに手間が増える。 
しばしば受ける誤解に「古本屋は二束三文で買ったものに高値をつけて右から左に売る」というのがある。
 たしかに「二束三文」といわれたら声高に否定するつもりはないが、「右から左に売る」というはちょっと違う。実のところ仕入れた本やCDはそのままでは商品にならない。いわば「原料」だ。「加工」しなければ商品にならない。加工で大変なのはクリーニングや補修もさることながら、じつは「値付け」が大変なのだ。商品相場の情報収集が必要で時間がかかる。
これは古本屋の仕事の中でも知的な興味を刺激される楽しい作業ではあるが、一方でやりだしたらきりがないし何よりも時間を取られる。
 だから中にはこれを避けるためにオークションを使う業者も多い。売り手は一定の価格で出品すれば、あとは市場が価格を決めてくれる。この売り方にしてから値付けという時間を食う作業から解放されたと、嬉々として話すベテラン同業者を目の当たりにしたことがある。