福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、見積金額を値切られる?の巻


 宗像方面から本の買取依頼の電話が多いのは、沿線に九大・九産大・福岡女子大・福岡工業大・福岡教育大など大学が多いからだろう。
 国家公務員や県の職員など福岡市と北九州市どちらにも転勤の可能性がある人もこの辺には多いようだ。こういう人たちにも読書家が多い。
 そしてなぜだかこの地区の牧師さんからもよく呼ばれる。
 この日も1件目の買い取りは、キリスト教関連の本。なんと3代続いた牧師さんだったらしい。使い込まれた聖書やキリスト教関連書籍を仕入れた。
 二件目は元大学教授。自宅とは別なところに書斎兼本置き場があるというので、そこまで出向いた。
「いやいや、遠くから来ていただきましたねえ。ご苦労様です。お店は福岡にあるんですか?」
「はい、福岡市内から来ました。ただ、店はないんですよ。インターネットで販売しています」
「ああ、最近はそういう人が多いからね。さっそくだけど、ここに積んである本がそれです。電話で話したように工学部で使った本です。・・・あれ、こっちは浮世絵とか変な本も出て来たね」
「なるほど、電気・工学関係の本が多いですね。昭和40年・・・、昭和38年・・・かなり古いですね・・・。正直に言うと、やっぱり古い本は足が遅い――売れるまでに時間がかかります。特に工学系というか理系の本はその傾向が強いかもしれません。技術が日進月歩の世界だからでしょうか。原理的な本で特に名著と言われる本には時代を超えて売れるものもあるけど、100冊に数冊ぐらいの割合でしょうか」
「そうですね。ただ、金額はどうでもいいんです。高く買ってもらいたいわけじゃないんです。こんな本でも今どきの学生が読んでくれたらいいんですよ。捨てるよりもそのほうがね。ああ、この辺なんかぼくが学部の学生の頃の本だ。古いね。名前が書いてるけど構いませんか?」
「大丈夫ですよ。それはそれとしてお見積もりしますから」
「そうですか。それにしても大した本がなくて申し訳ないなあ。大学を辞めるときにずいぶん捨てたんですよ。それでもまだこうやって出てくる」
「そうですねえ。たしかに古い本が多いですね。こちらの本は売れそうなところですが、逆にこっちの方はちょっと古すぎて売りづらそうなところですね」
「ほんと大した本はないから、持って行ってもらえるだけでも助かるんですよ。捨てるのも大変ですから」
「そりゃ有り難いお話ですが、うちは古本屋ですから値が付けられるものは買わせていただくつもりです。とはいっても売れるまで何年もかかりそうな本も多いし、申し訳ないけど見積額は大きな額にはならないと思います。〇〇円でなら買わせていただきます」
「いやいやそんなに要らないよ」
「でも先生、値が付くものにはお支払いしますよ」
「わかった、じゃあ△△円でいいよ。それだけで」
「わはは、先生、そんな風に値切られたの――これ、値切るっていうのかな――初めてですよ。ありがとうございます。じゃあ△△円で買わせていただきます」
「じつはまだまだ本はあるんですよ。そのうちまた出てくるから来てよ。連絡しますよ」
「ありがとうございます。喜んで参上します」
 

どちらも似たような本の山に見えるが、実は比較的高い値の付くものと安いものとに分けられている。安いものは一般的な内容の本が多い。専門性が高くなると値崩れしにくくなる。逆に一般的な内容だと類書も多く代替可能だったりするので安くなりがち。というわけで背景が白い写真が高めの本の山。