福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、新聞広告を出すの巻 

今月は買い取りが多かった。多い日は一日に4回。広告の出稿量が多かったからかもしれない。
 2014年から月に数回の新聞広告を出している。定期的に利用するのは朝日・読売といった全国紙だが、理由はふたつほどある。まずは広告費が安いこと。ちょっと補足すると、福岡都市圏に広告を出すとなると、地元紙(西日本新聞)は圧倒的に部数が多いので広告費も高い。いっぽう全国紙は福岡都市圏に限れば部数が少ないので広告費が安い。
 次に地元紙よりも全国紙のほうが、購読者に占める蔵書家・読書家の割合が高いということ。これはデータのない私の実感だが、地元紙に広告を出した日よりも、全国紙に出した日の方が商談成約率が高い。むろん、地方紙は発行部数が多いから電話の数も多いのだが、本の質と量が買い取りの水準に達してないことが多い気がする。
 どうやら大学教授など大量に本を買う人は全国紙を購読する傾向が強いようなのだ
。地方紙の場合、電話の本数は確かに多いが、売りたい本の量が少なすぎたり、本が多くても値崩れの激しい一般向けの本が多かったりで商談成立しないことも多い。
 近年新聞の発行部数が減っているという話をよく聞く。若い人は新聞を読まない、そもそも購読しない、ネットニュースで満足しているなどともよく言われることだ。
 その結果今や新聞の広告料は安くなり、購読者の高齢化が進んでしまった。新聞にとってはさぞや危機的な状況なのだろうが、皮肉にもわれわれの業界にとってはこれが広告を出しやすい環境をつくり出しているともいえそうだ。
 まず広告の訴求対象と購読者層がうまく重なる。大量の本を所有しそれを売りろうとするのはたいていの場合高齢者だから、購読者の高齢化は問題とはならない。 
 次に広告料が安くなったおかげで零細な古本屋でも出稿できるようになった。古本以外にも、絵画、酒、美顔器、オーディオ機器、骨董など「買い取り」をするリサイクル関係の多種多様な広告が増えているのも同じ理由からではなかろうか。
 その昔、古本屋は店舗を持っていた。古本屋を街で見かけたことがある人は多かっただろう。そんな時代には新聞広告を出す必要はなく、店舗自体が広告の役割をしていた。
 ところがインターネット(特にアマゾンのマーケットプレイス)の普及により事情が変わってくる。ネットで売れば全国各地から注文が入る。店の本棚に置いていたらいつ見つけてもらえるかわからないような限られた人向けの本でも、ネットで売り出せば全国、いや世界中の好事家の目に触れさせることができる。
 ネットでも本は売れることはわかった。一方で店舗を持つと家賃、水光熱費、店員の人件費など経費がかかる。それならばいっそのこと店舗を閉鎖してネット専業でいこうという古本屋が増えていったのがこの10数年の業界動向だ。
 さて店舗がなくてもネットで本は売れる。ところが本を仕入れるためには買い取りをしなければならない。そのためには「ここに本を買い取る者がいる」ことを世間に知ってもらわなければならない。そこで広告が必要となってきた、というのがここ数年の動きだ。 
 それ以前は店舗を持たない古本屋の告知方法と言えば、せいぜいホームページを作るぐらいだった。多少熱心な書店が、検索エンジンで「福岡」「古本」「買取」などのキーワードで検索した際に上位に表示させるための技術(SEOという)に費用を掛けたぐらいだろう。
 ところが最近は単発的な広告も含めると古書店の新聞広告を頻繁に見かけるようになった。
 この傾向はしばらくは続くだろうが、団塊世代が大量に寿命を迎える近い将来には終わりを向えるだろう。広告費はますます安くなるだろうが購読者も減り蔵書家も減るはずだ。