福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

 よかばい堂、移転とともに店舗を開く予定の巻

よかばい堂はこの10月より新しい事務所に移転する。それに合わせて一部を店舗にすることにした。現在井尻近くの木造アパート一階をぶち抜いて事務所に改造中。
 20坪ほどの大きさの事務所の大半はネット古書店として機能することになる。数台のパソコンと作業台を置くほかは本棚がぎっしりと並ぶことになる。
 店舗に期待するひとつはアウトレットとしての機能。今までは安値で他店に卸していた本を直接顧客に売る。いまのところ弊店は福岡で本の買い取りが非常に多く自前では捌ききれないほどの量なので、古書組合での交換会においてここ数年最も多く他店に本を卸してきた。その他店に卸していた本を今度は自前で店頭に並べて売ってみようという算段だ。
 当たり前だが他の古書店に本を売るよりも自分で売った方が利益は多い。ネットで売る場合は手間暇かけて出品しなければならなかいが、店舗があれば値付けが終われば棚に並べておくだけ。写真撮影も状態表記(本の状態を言葉で説明すること)もいらないし、売れた後の梱包・発送も不要だ。とうわけで、同業他社に卸していた商品を店で直接売ることをアウトレットと呼んでみた。
 さらに店舗があると情報発信力が格段に違う。仕入れたての珍しい品を展示したり、メディアの取材を受けることも可能だ。SNSで発信したくなるようなファンづくりも考えたい。
 本を売ってもらうためには、「ここに古本屋がありますよ!」ということを日頃から多くの人に知っておいてもらう必要がある。本を売ることなんて一生に一度あるかないかという人でも、少し前までの福岡なら、なんとなく「九州大学の周辺には古本屋が多い」と記憶していれば、いざ本を売る時は電話帳で調べたらなんとかなった。残念ながらいまではそのほとんどが店を閉めてしまったので、本を売る際にどこに持っていけばいいかわからないという人も結構いる。
 もちろん全国チェーンの新古書店もあるが、最近は本よりも別の商材に力を入れていたり、新しくてきれいな本以外は査定しなかったり、多忙すぎてなかなか来てくれなかったりするらしく、弊店にお鉢が回って来ることもある。
 本を売る人は古本が好きで古本屋通いが趣味だという人ばかりではない。むしろ夫のそんな趣味を苦々しく思い数十年添い遂げた女性から、夫の死後本を全部売りたい(「お金はいらないから早く全部持って行ってほしい」とまで言われたこともある)、と声をかけられることも多い(その逆、つまり妻が本好きというのは聞いたことがない)。
 というわけで、開店前のよかばい堂店主の頭のなかはお店への期待で膨らんでおり、夢物語ばかりを語ってしまったようでちょっと恥ずかしい。
 そこでちょっと落ち着いて古書店の実店舗の減少の現実を見ると、ここ十数年で福岡市内にも古本屋がどんどん減ってしまい、いま実店舗を構えているのは福岡市内で数えるほど。それにはそれなりの理由があるわけで、コストをかけて店舗を維持しても、店よりもネットの方がよく売れるなら、いっそ店など閉めてしまおうということだったのだろう。
 そんな環境の中でいまさら古書店が店舗を開くのだからよほどの勝算があるのだろうと言われそうだが、正直言ってまだよくわからない。今後このコラムでも経過を報告させていただきたいと思う。