福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、古書組合の交換会で汗を流すの巻

古本業界には古書組合というものがあり、各県ごとに独立した組合がある。古物商を持っている古本屋は入会金(概ね数十万円以上。県によって違う)を払っていずれかの都道府県の組合に入ることができる。以前は店舗を持っていることが加入の条件だったが、ネット専業になる古書店が増えたので、現在この条件は外されている。

 古本業界の特徴のひとつは、競合相手であるはずの同業者が仕入れ先になったり、逆に仕入れてくれる客でもあるという点だ。

 古本の卸売業者というものは存在しない。仕入れ先は本を売ってくれる個人や法人だが、同時に自分が苦手としている本は他の古本屋に売ることがある。定期的に古本屋が集まって市を開き互いに売りあう。これを業界では交換会と呼んでいる。この交換会を通して同業者が互いに仕入れ先になったり顧客になったりするわけだ。

   先日の交換会でも見慣れない老齢の紳士が突然会場に現れ名刺を差し出してきた。見ると某県の組合に所属する古書店主だということがわかり、すぐその場で入札に参加してもらう。なんでも別件で福岡に来たところタイミング良く福岡の交換会の日に重なったので顔を出してみたと言う。しっかり高値でCD三箱を落札していただいた。

 いったんどこかの県の組合に加盟すれば、他の県でおこなわれる交換会にも参加できる。これは各県の組合を取りまとめる全国組織・全古書連があるからで、他の古物商にはない古書組合の特徴であるらしい。

   福岡では月に3回しか行われていない交換会も東京では毎日のように行われている。神田神保町以外にも高円寺や五反田の支部でも行われている。全国から古本屋が買いに来るし、逆に売られる本も全国から集まってくる。

 それぞれの組合は定期的な市以外にも年に数回「大市」と呼ばれる大きな規模の市を行うことがある。たとえば東京で行われる大市では全国はもとより世界中の図書館・博物館・美術館からも買い手が集まってくる。最近大英博物館で日本の漫画展が行われて話題になっているが、同博物館のキュレーターが神田の大市で手塚治虫水木しげるの漫画を仕入れることもきっとあるはずだ。

   この手の市ともなるとその準備からして大掛かりなもので、印刷物の目録を作って得意先に配布し、入札前に下見の日程を設けて一般にも公開している。組合員以外でもそこでほしいものを見つけたら、古書店に頼んで落札を代行してもらうことができる。組合の市はあくまでも「交換会」なので組合員同士でしか入札ができないからだ。

   大市には貴重な資料が出品されることがよくあり、新聞の記事にもなる。この春大阪の大市では手塚治虫が中学生時代に描いたとされる昆虫のスケッチが出品されていた。

 福岡の組合でも先日大市を開催した。全国から集めることは難しいが、九州各県には声をかけ人も物も各地から集まってきた。

 組合で交換会の世話役という重責を拝命している手前、いつもなら気ままな商売しかしていないよかばい堂店主も、このときばかりはかなり気合を入れて臨んだわけだが、脱サラ以降ひさしぶりに組織人としての仕事をした気がし、終わった時にはほっとしたものだ。

 組合員の尽力の甲斐あってなんとか盛会に終わり6回分の売り上げを達成することができた。

 

 

 

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大阪で行われた大市の目録の表紙 物がこの手塚治虫の中学時代の昆虫スケッチ

 

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その目玉となった出品