福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、ネット専業から脱して店舗売りを計画中の巻

 弊店はおもにネット上で販売しているネット古書店だ。古本市などに出店することもあるが、まあ、おまけ程度の売り上げである。

 かといってリアル店舗にまったく無関心かというと、そんなことはない。古本屋(に限らず本屋)の店舗の可能性についてはつねに頭の片隅で考えている。ネットだけで漫然と商売していては早晩行き詰ってしまうのではなかろうかという危機感も当然ある。

 この秋に弊店は井尻駅の近くに移転した。事務所は少し広くなり、敷地内には使われてない場所もあるので、敷地の活用次第では本の店頭販売も可能ではないかと考えている。

 先だって廃業する医院から本と一緒に本棚も引き取ったので、古本屋の店頭に置くには充分すぎるほど見栄えのする本棚も期せずして手に入った。

 その本棚に並べて売る本は、いままで他店に卸していた本を置こうと考えていて、ネット用の在庫は店では売らないつもりだ。このあたりの事情はちょっとわかりにくいので説明してみたい。

 まずは、「他店に卸していた本を売る」ということについては、このコラムで再三書いてきたので説明を省くが、まあとにかく古本屋は自分の不得意とする本を他の古本屋に売るものなのである。それをつづめて他店に本を卸す、と言ってみた。

 不得意な理由はさまざま。単純に自分の好みや専門以外は扱わない(「うちは法律書専門店なのでエロ本は扱いません」など)場合もあるが、小規模な店が膨大なコレクションを買った場合は、本を置くスペースが単純にないという物理的な理由の場合もありえる。

 よかばい堂はネット専業なので、いままではネットと相性の悪い本はどんどん他店に卸してきた。たとえば大きすぎて送料が高い割には安価な本や、ネットにカタログが存在しないのでカタログから作らないと出品できない(本の属性を調べたり写真を撮ったりと時間がかかり出品コストがかさむ)本などがそうだ。いままではこの手の本は他店に卸していたが、これからは自店で売ってみようと思う。

 ネット販売と比較した場合の店売りのメリットは以下の通り。

 店売りでは、本の程度や状態を調べて記述する手間がいらない。ネットで売る場合は本の状態をチェックして「数ページに書き込みがあります」「カバーにしわがあります」「小口にヨゴレが目立ちます」などと細かい瑕疵を漏れなく記載しなければならない。これをしないと購入後クレームがついたり低評価をつけられてしまう。このコストが実にばかにならない。

 これだけコストを掛けて出品しても、数年後に半分しか売れなければ、残りは廃棄処分するしかなく、つまり投入済みの出品コストも本と共に捨てることになってしまう。もったいない話だ。だから出品コストが低い店舗売りは魅力的なのだ。

 もうひとつ。すでにネットで売っている大量の在庫を店で売らないのか、という問題。これをしない理由は在庫管理が煩雑になりすぎるから。

 ネットで本が売れると、在庫から探し出すのだが、このピッキングと呼ばれる作業を容易にするために弊店では出品した順に本棚に詰めている。これだと棚には無作為に本が並ぶだけでジャンルも分野もばらばら。本屋の店頭の棚としては使い物にならない。かといってジャンルごとに分けたのではピッキングが大変だ。もっと言えば客が本を抜いたあと別の場所に戻しでもしたらピッキングが絶望的に困難になる。なのでネット売りの在庫は店では売らない。

 そういうわけで時代に逆行してネット古書店リアル店舗に挑戦することになりそうだ。この話にはまだ続きがある。次回にそれをやってみたい。