福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2012年1月号掲載分

落合博満の超野球学〈2〉続・バッティングの理屈 [単行本]
落合 博満
出版社: ベースボールマガジン社 (2004/03)

 日本シリーズではホークスを応援していたが、中日の落合元監督は敵ながら興味深い人物だと思っていたら、この本が売れた。。
 「バッティングの理屈」と銘打っているので、さぞや専門的で素人には退屈な内容と思いきや目次には意外な言葉が並ぶ。「カーブの打ち方は存在しない」「”軸足回転”のウソ」「ボールを”押し込む”という表現の意味」「手首は意図的に返してはいけない」
 よく耳にする表現をことごとくひっくり返そうとしているかのようだ。いずれも野球解説者などが使うのを耳にしたことがある。落合はそれに異を唱えているようだ。
 こんなことを言っている「"軸足回転”の正体は、悪癖を持った選手が、それを矯正するために心がける意識の置き方なのである」
 わからない。だが素人にはそれは当然だ。「軸足を回転させろ」という言い方は正確ではないし、相手に伝わらないと言いたいのだろうか。
 ゴルフを始めた頃「スイングのときに頭を動かすな」と誰もから言われたが、これが分からなかった。スイングしたら頭動くに決まってるじゃん、と思っていた。
 天才バッターの話と、お前の下手なゴルフ談義を一緒にするなといわれそうだが、言葉を使ってからだの動きを人に伝える難しさは共通だ。
 そんな理屈を突き詰めようとした落合という人はやはり興味深い人物だ。


イギリス文学のわが師わが友 [単行本]
奥井 潔
出版社: 南雲堂 (1989/12)

イギリス文学のわが師わが友

イギリス文学のわが師わが友

本の後ろの見開きに切り抜きの訃報記事が貼られている。前の所有者の手によるものだろう。
「奥井潔さん76歳(おくい・きよし=東洋大名誉教授、英文学専攻)10日午後(中略)、武蔵野市の病院で死去」。切抜きの下に手書きで「平成12年12月16日」とある。
 奥付によると著者の奥井潔は1924年台湾生まれ、52年東大文学部英文科卒業とある。二十八歳で卒業したのは間に戦争があり兵隊に行っていたからだろうか。そう思いつつあとがきをみると、むべなるかな「昭和二十一年に復員して南方から帰国し、大学に復籍」とある。それから卒業まで6年もかかったのは、戦後の混乱期の中、日々の糧を得つつ大学に通っていたからだろうか、などと想像してみる。
 気づいたら著者その人に興味をそそられていた。他の著作はないかとアマゾンで探してみると『英文読解のナビゲーター』という学習参考書があった。熱い書き込みでレビューの欄が賑わっている。曰く「受験参考書を超えた名作」「受験の神様」「家訓として子々孫々と、この本をも(ママ)、勉強させたい」などなど。
 ひょっとして同姓同名の別人かと訝しんでウィキペディアで調べたが、間違いなく同じ人物。「1954年から半世紀近くにわたって駿台で教鞭をとり続けた」とある。
 というわけできわめて稀な展開ながら、店主は図書館でこの本を借りることにした。中身、面白そうです。もう紙面がないので紹介できないのが残念だが。