福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2013年月2号掲載分

絵画材料事典 [単行本]
ラザフォード・J. ゲッテンス (著), ジョージ・L. スタウト (著), 森田 恒之 (翻訳)
出版社: 美術出版社; 新装版 (1999/6/16)


 翻訳者による「新装版刊行にあたって」という 巻末の文章が興味深い。
「復刊を求める多くのかたがたの要望が集まって、約20年ぶりにこの本が再び日の目を見ることになった。絶版だった間に、『あの本はどうしても手に入りませんか』と何回きかれたことだろう。『コピーももうぼろぼろなんですよ」という。古書店にもめったに出ない」
 いまなら著作権侵害といわれそうなコピーについて著作権者に面と向かって言及したり、言われた方も聞き流したりという牧歌的な光景がつい20年前まではあったのだ、ということも感慨深いが、せどり屋にとってはレア本が必要とされている現場の生々しい声に実に興味をそそられる。
 子どもの頃、どこかの家で欄間に掛かっている鶏の絵についてこんな話を聞いた。「この鶏冠の鮮やかな赤は、本物の血を絵具に混ぜて使ってるんだよ」。
 その記憶が頭をよぎったので、「血」という項目を探したが見当たらなかった。絵画じゃなくて陶芸の材料に分類されてしまうのだろうか。本物の血を混ぜたら本当に鮮やかな色が出るのだろうか。あの記憶はまぼろしだったのか。

 

 

世界記録を生んだ栄養食―マレイ・ローズの父の手記 (1964年) [古書] [-]
イアン・F.ローズ (著), 花田 達二 (翻訳)

世界記録を生んだ栄養食―マレイ・ローズの父の手記 (1964年) [古書] [-]
イアン・F.ローズ (著), 花田 達二 (翻訳)

48年も前の本だが、ロングセラーだったようだ。手元の本の奥付には1977年9刷とある。 ローマ五輪で活躍したマレイ・ローズという水泳選手の父親が書いた本。巻頭には同選手の写真があり、キャプションには「少年チャンピオン」と書かれているが、今では別の意味になりそうだ。
 この金メダリストの一家はベジタリアンのようだ。「マレイが生まれてから一度も肉料理を口にしたことがない」とある。
 当時は肉を食べないで金メダルを取ったことがきわめて珍しいことだったのだろう。いや今でも珍しいのかもしれないが。本書の著者も医師でも栄養士でもなくただ健康のために菜食を採用した人であるらしい。
 原題が"FAITH,LOVE,and SEAWEED"となっていて、どうやら海藻が取り上げられているようだ。やはりというべきか、世界的海藻摂食国(?)であるわが国についても言及されている。「一九三〇年台の初頭にオーストラリアで戦った日本の水泳選手たちは、海藻を食べるということで話題となっていた。ニューヨークの五十六番街にある日本人食堂では、毎晩、数種類の海藻が食事に出されている」「私たちはほんの二、三週間前、新種の海藻を食膳にのせることができた。日本ではこれを『ひじき』と呼んでいる」
 化学肥料よりも堆肥を良しとし、「化学肥料を憂慮する」「土壌の質で食物の価値がきまる」という見出しの並ぶ章もある。
 お買い上げいただいたのは、どうやらライフセーバーの方らしい。
 「アメリカでは今日、ティーンエージャーが全国民のうちで最悪の栄養事情にある」「彼らの家庭外での食事の大半が清涼飲料水、ハムバーガー、アイスクリーム、コーヒー、煙草となっている」