福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

古本屋のという商売について

 先日、「古本の仕事に興味があるので雇ってもらえるだろうか?」 という電話を受けた。弊店ホームページにスタッフ募集とあるのを見たそうだ。定年になって新しいことを始めたいという男性からだった。若い人なら後継者含みであれば検討したのだが、少し年配すぎるので残念ながらお断りした。

 それにしても古本屋を始めたいと思っている人はけっこういるようで、福岡の古書組合が過去2回ほどやった「古本屋になるための講座」には結構人が集まったらしい。らしい、などと他人事のように言ったのは、この手の講座が開催されたのは私が組合に入る前のことだからだ。

 古本屋といっても様々だ。自分ひとり食っていければいいのであまり仕事はしたくないという人から、野心満々で大きな企業にしたいと思っている人までいる。

 じっさいのところブックオフは古本屋から始まって上場企業になったし、長野県のバリューブックのように独自の本の買取り方法で数十億円の売り上げを上げる会社も出てきている。

 いやいやそこまでの野心はないが、定年後好きな本を売って暮らしたい、脱サラしてのんびりと一人でやれる仕事を見つけたい、子育てが終ったので何か新しい仕事をやってみたい、などという人たちは結構いるようで、どうやらそういう人たちが「古本屋になるための講座」に来るようだ。実際にネットで本を売ってみた経験のある人も相当数いるにちがいない。さて、もしもいまよかばい堂店主がそんな講座で話すとしたらどんな話をすればいいだろうか?

 私は自分自身が脱サラして始めたのだが、「本当にこの仕事で家族を養っていけるのだろうか?」と不安だった時期がある。しかしそれから13年経ちこの商売で家族を養い住宅ローンを返済しつつ子供を大学へもやった。

 だから自分が話すなら、何はともあれ古本屋でもちゃんとやればきちんと生活を維持できる、ということを話したい。

 むしろ本の売り方については、ことネットでの販売に限れば特筆すべきことはない。「ネット古本屋のはじめ方」だの、「アマゾンマーケットプレイスで売ろう」だの、「ヤフオクで儲けよう」だのといったノウハウ本がたくさんあるから参考にするといいだろう。

 むしろ重要なのは本の仕入れだ。一時はブックオフ仕入れの場として人気があったがいまではもうブックオフせどりだけで成立している売り手は少なくなっている。持続できる商売をするならそれ以外の仕入れ先が必要だ。弊店では一般の人からの買取りをすることにし、ネットや新聞広告を使って告知することとした。

 店舗があればそれが一番わかりやすい。本を売りたい人は、あそこに古本屋があったな、と思い出し店を訪ねるか電話番号を調べるかするだろう。

 ところがネット専業で店舗がないと、広告等を使って告知するしかない。そのせいか、いまや全国紙にはあまたの買取り広告があふれている。

 限られた誌面なのでこれくらいで切り上げるが、ひとつこの手の内容を書いた本で非常に充実した内容を持つ本があるので紹介しておこう。

 古本屋の仕事に興味がある人に薦めたいのが『古本屋になろう!』(2014年 澄田喜広)という本だ。著者は吉祥寺にある古本屋「よみた屋」の主人。一代で築いた吉祥寺の店を21年以上続けているのみならずネット販売もこなしており、現在の古書店の経営について書くなら最も適任だと思われる人だ。 

 最初から「古本店をビジネスとして成り立たせる方法に焦点を絞って書」くとはっきりさせており、古本屋の商売の仕方について網羅的に書かれた本で私もしばしば参考にさせてもらっている。