福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2013年8月号掲載分

ブータン―ヒマラヤの王国 (1965年) [古書] [-]
東郷 文彦 (著)
出版社: 鹿島研究所出版会 (1965)

 数年前国王夫妻が来日し被災地の訪問で旋風を巻き起こしたブータンだが、この本が出た1965年当時は情報がきわめて限られていただろうから、この本は貴重な情報源だったろう。
 文章は少なく、半分以上は写真で占められている。その説明も「ブータン国首相と著者」というようにしか書いてないのでどちらがどちらか見分けがつかない。服装や顔つきでわかりそうなものだがわからない。市井を歩く人々は民族衣装に日焼けした顔だからわかるが、スーツを着たブータンの首相は日本の外交官と見分けがつかない。
 はっきりわかるのは著者の夫人。50年前のブータンの山村風景の中でヨーロッパ風のハイファッションは強烈な存在感(違和感?)を醸し出している。    調べてみるとこの夫人、戦時中の外相東郷茂徳の娘で母親はドイツ人らしい。
 この本の版元、鹿島研究所出版会(現在の鹿島出版会)は鹿島建設の社長だった鹿島守之助が創設した。
 守之助ももともと外務省の役人で、鹿島一族に見込まれて婿入りし鹿島姓となった人だ。このへんはこの著者の経歴と似ている。
 

 

 

軽飛行機の設計法 [単行本]
L.パズマニー (著), 阿部 郁重 (翻訳) 内藤子生(監修)
出版社: 日本航空技術協会 (1988)


 おどろくべきはこの本のコンパクトさ。A5版(15×21センチ)の厚さ5ミリ130ページ弱の小冊子。これだけで飛行機が作れるのかと思うが、監修者いわく「本書さえマスターすれば飛行機設計の大綱がつかめるのです」。
 著者パズマニー氏の経歴はアメリカ人であること以外は紹介されていない。誰もが知るほどの存在なのか、紹介するまでもないという扱いのようだ。
 監修者の内藤氏は航空工学の専門家。昭和12年に東大工学部を卒業とあるから、日本軍の戦闘機の設計にあたっていたのは間違いなかろう。訳者の阿部氏の経歴にも「陸軍航空工廠」とある。つい数十年前まで敵味方で戦った日米の航空機エンジニアたち。
 初版は昭和46年だが手元の本は昭和59年の7刷。専門性の高いこの本が7刷も出たということも異例な気がする。
 あとがきには「パズマニー氏は、希望者にはここに説明した”PL-1”またはその改良型”PL―2”の詳細設計図をも分けてくれます」とアメリカの住所まで書かれている。