福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

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よかばい堂、イギリスの古本の村を探訪するの巻 (その2)2017年12月号

よかばい堂、イギリスの古本の村を探訪するの巻 (その2)

 今月も先月に続き、英国の古本の町ヘイオンワイのレポート。
 まずは町を歩いた印象。こじんまりして観光客にとっても散策しやすい。いたるところにカフェやパブレストランなどの開放的な店舗があり、本や巡りの合間に適当に休みながら散策ができる。
 観光案内パンフによると23の古本屋がある。
 神田神保町の140軒は別格として早稲田界隈でも40軒というから、小さな町に23軒だと非常に目立ち、「古本の町」という印象がはっきりとする。ふつうなら大学が集まる大都市に自然発生的にできる古書店街が、辺鄙な田舎にあるというのはちょっと不思議な光景だ。
 古美術やアンティークの店も多い。本好きにとってはロンドンから1泊で遊びに行くには手ごろなのだろう。大学の町オックスフォードからは2時間、ロンドンからでも3時間ぐらいだ。
 イギリスの田舎道は今回初めて走ったが、看板がほぼ皆無つまり文字を目にしないのできわめて走りやすかった。ラウンドアバウトも慣れてしまえば問題なく、信号待ちがないだけストレスも少ないぐらいだ。慣れないレンタカーでも楽しく運転できた。これがお気に入りのスポーツカーならもっと楽しかろう。 
 東京なら那須高原や軽井沢あたりの小さな村に古本屋が20数軒密集している感じだろうか。福岡で考えるなら九重か阿蘇あたりよりももう少し距離があるだろう。
 いくつかの店に入ってみた印象は、どの本もきっちり値付けがされていて、日本に買ってきて大化けするようなものは見当たらかったということ。これはある意味予想通りだ。ネットが都会と田舎に情報の格差なくしてしまったから、田舎だからといって安い値付けをしている理由はないのだ。
 数日後にロンドンの古本屋を数軒のぞいてみたときの比較で言うと、当然ながらヘイオンワイの店は面積が広くゆったりとしている。特に一番大きいリチャード・ブース(この町にを古書店を最初に開いた男)の店には大きなソファがいくつも置いてあり、カフェも併設されていてゆったりしたつくりが特徴的だ。
 本にはさして興味のないカミさんも退屈することなく散策しては買い物を楽しんでいた。朝市や食料品店が楽しかったようで、本好き以外の人も楽しめる開放的な雰囲気が観光地として長続きしている理由かもしれない。
 宿はいわゆるB&Bと呼ばれる簡易なもので二人で90ポンドほどだからロンドンの半額ぐらいだろうか。
 小さな町だから2日もいたら時間を持てあますと思い1泊しかしなかったが、もう少しゆっくりしてもよかったかもしれない。
 数日後はロンドンへ行きレコード屋を数軒回ってみた。
 ソーホー地区で面白い店を見つけて3日間通ったのだが、初日にみつけた藤圭子のLPが翌日には売れていたのには驚いた。この店には日本人の店員がいたので、そのせいで日本のレコードが置いてあったのかもしれないが、それにしてもロンドンに藤圭子を買う人がいることがわかったのは興味深い。
 たしかに動画サイトを見ていると、歌謡曲に興味を持っている人が世界中にいて、藤圭子の曲をアップしているアルゼンチン人がいたりするから、レコードが売れても不思議ではないのだ。
 ビートルズのレコードを数枚買ってカフェに入り一休みしてふと気づいた。今やロンドンやパリで圧倒的に多い中国人や韓国人の観光客も、ついぞレコード屋では見かけなかった。 そりゃそうだ。当時中国は文化大革命の真最中、「資本主義の退廃した音楽」など聞けるはずもない。
 韓国も朴正煕政権下の夜間外出禁止令の頃だ。日本ではいまの70歳前後がビートルズ世代と呼ばれるが、中韓両国ともその世代で青春期にビートルズを聞いた人はほとんどいないはずだ、ということに思い至ったのである。