福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「どんな本が買ってもらえるんですか?」と聞かれた時の答え方

 本を買います、という広告を出しているので毎日電話がかかってくる。そのすべてと話がまとまるわけではない。むしろ成約しない方が多いかもしれない。残念ながら買えない本が結構あるからだ。典型的には百科事典・日本文学全集・世界文学全集・美術全集など昔の家の応接間に飾られていたタイプの本。さらにいえば小説・ノウハウ本・自己啓発・ビジネス書などは買えないものがほとんど。

 古本屋は売り主の家まで出向くかどうかをどうやって決めているのか? 本がたくさんあれば行くのか? たとえば一部屋ぎっしり本棚が並んでいて何千冊かある、という話には無条件にとびつくのか。逆に数冊しかないがきわめて珍しく高額な本ばかりである、という場合はどうするか。

 私の経験ではこうだ。まず、本がある場所を尋ねる。たとえば福岡市南区中央区城南区などであれば数十分以内の距離だから条件が甘くなる。場合によっては本の内容を詳しく尋ねるよりも現地に直行した方が話が早い。

 それでも本の分量はたずねる。漫画本と雑誌が数冊ずつ、なとどいう場合は明らかに赤字になるからやんわりと新古書店のチェーン店などへの持ち込みを勧めたりする。やはり近場でも最低数千円は買えそうだと見込めないと出張はペイしないからだ。

 もっと遠い場所からの電話だったら、もう少し情報が必要だ。そのときはこう尋ねることが多い。「本はご自身で集めたものですか、それともご家族のものですか?」

 自分で集めた本だという場合は慎重になる。なぜなら、自分で買った本は手離れが悪いから。古本屋が買いたい本は売らずに手元に残しておき、ありふれていて値崩れしている本だけしか売りたくないという場合も多い。何らかの理由で高い本も売らざるを得ないという場合でも、査定金額に難色を示されることが多いのも「自分の本を売る」場合の特徴だ。自分で集めた本には思い入れが強いので人情から言えば当然のことだ。

 家族が集めた本、他界した親族が集めた本などだと手離れがいい。その場合はどんな分野・ジャンルの本かを確認する。本のジャンルを聞き出したい場合は「失礼ですがお父様(お母様)は学校の先生をなさっていたのですか?」と聞くことが多い。本当は「お父様のご職業は?」と聞きたいのだが、これだといかにもぶしつけなので。先生と聞かれて悪い気がする人は少ない。たとえば世界史の先生だと歴史の研究書が多いのはおのずと知れる。そうでない場合でも「いえ、教師ではないんですが、鉄鋼会社で技術者をしていたので理数系の本が多いのです」などと教えてくれる場合が多い。

 もちろん仕事とは無関係の本を集める人だっている。その場合でも「いえ父は銀行マンだったんですが、金融の本はほとんどありません。趣味の俳句の本がたくさんあります」などというように話にが展開していくきっかけになるのがこの質問だ。

 ここまできたらおよその目途がつく。1)本の量(たとえば本棚3つ分)、2)本のある場所(たとえば宗像市自由が丘)、3)本のジャンル(理数科系の本)。

 さらに「お父様は本の処分についてご了解されてますか?」と聞けば確認もできるし、場合によっては亡くなったかどうかもわかる。

 さて、これでだいたい知りたい情報は手に入った。上記の場合なら「出張します」と答える。宗像まで行ってもペイするとの判断だ。

 ところで本は大量にあればあるほど古本屋は喜ぶのだろうか? 基本的にはそうだ。というのは、大量に集められた一定の分野の蔵書は、どんなジャンルであれレアものが含まれている確率が高いからだ。ただ、全部持って行ってくれと言われると別の問題が生じる。まずは大量の本を動かすマンパワーの確保にコストがかかる。さらにその処分にもコストがかかる。本を家庭ごみとして出せば無料だが、われわれが捨てると「事業用」の扱いとなり自治体に処分費を払わねばならないのだ。