福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

よかばい堂、学校の先生から本を買うの巻

 学校の先生は本をよく読む職業だから、買い取りに行くことも多い。大学の研究者には本を読むのが商売のような人もる。一方で小学校の先生は教育方法や指導法についての本が多い。こういう世界にもカリスマ先生がいるようで、「先生の先生」とでもいうべき存在となり注目を集め、独自のメソッドを広める講演会や研修などをやっているグループもあるようだ。意外とそういうものに需要があったりするので、油断がならない。

 高校の先生ともなると、中には研究心が嵩じて研究家としても一家言持っていたり、学会でそれなりの存在感を示している人もいる。そういえば山口昌男網野善彦といった人気学者も一時期高校教師をしていたはずだ。

 そういう人の蔵書はさすがに本格的な研究書が多く、古本屋にとっても査定のし甲斐があることが多い。高校の漢文の先生の本を扱ったときは、その先生地元の大学でも講師をしていたらしく学会でも発表していたようで、中国文学の専門書を大量にお持ちだった。高校生に漢文を教えるためだけなら、こんな本を必ずしも必要ではないだろうというような本もたくさんあるわけだから、むしろ大学教授の蔵書と言ってもいいかもしれない。

 一方で、歴史の教諭の本は買取りが難しい場合が多い。歴史書といっても専門性の高い本もあるが、それは場所と時代を限定すれば専門性は否が応でも高くなるわけだが、高校生に歴史を教えるにあたってはあまり必要ないことでもある。

 だから、高校の教諭の蔵書はどちらかというと「日本の歴史」「世界の歴史」といったタイプの本が多く、これらは一般人も読むため部数も多く古本価格も安いものが多い。ほとんど値が付かないこともしばしばだ。

 某有名私立進学校の数学の先生の蔵書には月刊誌「大学への数学」のバックナンバーや、大学入試の過去問が大量にあった。これは非常にありがたい買い取りで、受験業界は競争が激しく、こうした古い資料は引っ張りだこなのだ。過去問研究や問題作成のネタにするのかもしれない。

 さて、大学の先生の蔵書はバラエティ豊かで面白いことが多い。工学部の教授(故人)の蔵書の場合ご本人が90年前にドイツに留学していたため、当時世界の文化の中心だったベルリンのワイマール文化の香りのするあらゆる印刷物を持ち帰って来ており、これが本よりも面白くまた貴重なものが多かった。

 別の教授は神学を教えていた神父さんで、キリスト教の本は当然たくさんあるのだが、それ以外にも大学紛争の頃の「アジビラ」がぞろっと出てきたりもした。

 何度か書いたと思うが、詩人でもあり仏文科の先生をしていた方の家からは、国内外の詩人・文学者・哲学者の大量の手紙・書簡類が出てきた。 

 一方でなかには本に淫している、と形容するのがふさわしい人もいる。同じ本が何冊もあったり、どう考えてもこんなに大量の本は読めないだろうと思うほど大量だったり。

 とにかく本が好きで仕方ない感じ。この本はなかなか手に入りにくい本なので、古本屋に出た時にすぐ買ったとか、全集を全部揃えるのに大変だったとか、本を研究の対象としてというよりもコレクションの対象とみているような話が多いのが特徴だ。古本屋よりも古本の相場や市場での出品状況に詳しかったりもする。余計なお世話だが、本業の方は大丈夫ですかと言いたくなるような方もいらっしゃった。

 そうかと思えば研究対象の本は本棚に2段分ぐらいに収まりその代わりどの本もボロボロになるまで読み込まれていたこともある。

 総じて大学の先生は本を売り慣れている人が多い印象だ。高校の先生に比べれば図書の購入予算が多いだろうし、研究者同士の献呈本も多いだろう。本がどんどん増えるから頻繁に処分しないと空間を圧迫するので、本を売りなれているのだと思うがどうだろうか。