福岡古本買取よかばい堂の古本買い取りコラム       福岡の経済誌「月刊フォーNET」連載中!

福岡古本買取よかばい堂の店主が、福岡の経済誌「フォーNET」に連載中のコラムの過去掲載分です。

「月刊フォーNET」2011年9月号掲載分


文字始源 象形文字・遊行 [単行本(ソフトカバー)]
粟津 潔 (著)

作者の粟津潔はグラフィックデザイナー。名前はよく目にする。デザインの世界には詳しくないが、どうやらこの世界での大御所であるらしい。
 例によって売れた本を発送前にぱらりとめくると、その著者本人がこれまた漢字研究
の大御所白川静と対談をしている。この対談のおかげでこの本の重みが何倍にもなっていると言えるのではなかろうか。
 単に造形的に興味を持ったデザイナーが、ちょっと甲骨文字の本を書いてみました、というのとは一味違うぞという仕掛けがなされている。仕掛けというとちょっと意図的すぎる解釈かもしれないが、重みが増しているのは間違いない気がする。。
 米国在住の日本人がお買い上げの主。どんな方だろうと気になったので失礼ながらお名前を検索させていただくと、米国の大学で日本語を教えている方だった。
 ぱらぱらと見ただけだが、実際に筆をとって甲骨文字を書いてみたくなった。対談の中で白川静がこんなことを言っている。
 「書かないと字の意味は、わかりません。ぼくは、さっきもお話したように甲骨文を全部写しましたから、字をつくったひとの気持ちがわかる。このかたちならば、この意味でなければならないということが、自然にわかります」




地球市場時代の企業戦略―トランスナショナル・マネジメントの構築 [単行本]
クリストファー・A. バートレット (著), スマントラ ゴシャール (著), 吉原 英樹 (翻訳)
出版社: 日本経済新聞社 (1990/11)

 20年前いわゆる「グローバリゼーション」全盛期のころの本。
監訳者あとがきによれば、「この本の主たる内容は、日、米、欧の多国籍企業九社のケース・スタディに基づく分析」だそうな。
 日本企業では、花王日本電気・松下の3社が取り上げられている。思えばこの20年でずいぶんと時代が変わったものだ。当時は中国はおろかBRICSも話題になってない。グーグルはおろか、アップルもマイクロソフトソフトバンクの誕生していない、いや誕生はしていてもビジネス書のケーススタディに取り上げられるような成長はまだしていない。 版元の日本経済新聞社は、重版しても利益が出ないと判断しているのだろう。それでも読みたい人は、中古ででもいいから手に入れようとする。発売当時はそれほどベストセラーにもなっていないからだろう、残存する数が少なく手に入りにくいのでプレミア価格になっている。
 アマゾンにはレビューが2件。そのうちのひとつは2009年に書かれたもの。出版から19年たってからのレビュー。「経営学を学ぶものにとっては欠かすことのできない名著のひとつ」と評されている 
 お買い上げいただいた方は、某上場企業の執行役員の方。やはりビジネスマンが読むのだ。